スペース・ゾンビ 吸血ビールス大襲来  「評価 C」
遥か宇宙の彼方からテキサスの田舎町へ、無数の宇宙ビールスが襲来してきた。ビールスは風に乗って町の住民達に宿り、たちまち彼らの体を血肉を求める吸血ゾンビへと変えていく。この事態を重く見た米軍のサンダース将軍は、一刻も早くビールスを全滅させようと核兵器の使用許可を大統領に願い出た。一方で叔父叔母がゾンビと化してしまった写真家の青年ジェフは、家出娘のジュリーと協力して死霊ひしめく町内からの脱出を図るが…。
灰色に塗った皮膚に水性ペンで青筋を書き込んだような、なんとも侘しい外見のゾンビたちが大挙出演するホラーコメディ。ゾンビがそんなものだから残虐描写なんて到底期待できるはずも無く、ゾンビの集団による食人やチェーンソーによる首切断といった場面も一応あるにはあるものの、ねちっこさがないドライな描かれ方だったために凄惨性が格段に薄まっていたのだ。またストーリーは登場人物たちが町の中を延々とウロウロしているだけで全く進展する気配が無いし、ジェフとゾンビとのカンフーバトルも陽気なカントリーに乗って行われるという観ている端から気が抜けていく代物で、何処となくトロマ映画に近いものを感じずにはいられなかった。しかしそんな気だるい雰囲気が漂っている本作において、研究所の入り口で起こったサンダースの一悶着や核兵器投下の際のテキトーな手続きなど、軍隊関連のブラックユーモアが刺激を与える数少ない要素として作用しており、作品全体の空気が絶妙なバランスで引き締められていたのである。(それにしても本作のビデオの解説文には「キャトルミューティレーションをモチーフにしたSFホラー」と紹介されているが、どう考えても違うよなぁ…)

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