血の週末・暴獣のいけにえ    「評価 D」
麻薬中毒者ジョーンズは両親を殺した罪で逮捕され、精神病院に収容されていた。ところが8年後、彼は所員を殺害して病院から脱走。奪い取った車を乗り回し、老婆を轢き殺し、郊外の小さな農場へと辿りついた。そこでは農場主ブラドリーが友人達を招いて楽しい週末を過ごしている。これから巻き起こる惨劇も知らずに…。
80年代に量産された殺人鬼ホラーの一本。この映画の顔であるジョーンズは、両親殺害に精神病院と実に分かり易い狂人設定がなされている割には外見が地味そのもので、灰色のTシャツにジーンズと、どこにでもいそうな普通のオヤジといった風体だ。殺される側にいる農場の青年ミステークの方が、白塗りの顔にロックかぶれの衣装と、遥かに狂人っぽい容貌をしていると言えよう。しかしジョーンズには台詞らしい台詞がまるで存在せず、ただ殺害シーンで「ハーハハハハハハハ!」と高笑いするだけだったりと、中身の方はきっちり狂人をしていて、そのギャップから「2000人の狂人」の住民たちに似た戦慄を感じさせてくれたのである。
でもその恐怖感を、平坦な演出と脚本が完全に打ち消していたのが残念極まりなかった。前半部分におけるブラドリーたちの掛け合いはダラダラとしているだけで面白みが殆どないし、ジョーンズも初めの頃は老婆を車で跳ね飛ばして大笑いする豪快さがあったのに、次第に家を停電させたり物陰に隠れて相手の様子を窺ったりと行動が姑息になっていき、それに伴って殺害の手口も地味で印象の薄いものへと変わっていく。結果、作品は後半になればなるほど盛り下がり、最終的には目も当てられないような退屈さを漂わせるようになるのだ。

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