アクエリアス 「評価 A」
真夜中の劇場で、ピーター率いる劇団による前衛ミュージカルの稽古が行われていた。なかなか劇が完成しないことへの苛立ちから周りに怒鳴り散らすピーターに対し、劇団員たちは皆呆れ顔。だがそんな中、精神病院から逃げ出してきた一人の男が劇場内に紛れ込んだ。彼はミュージカルで使われるフクロウのマスクを被ると、そのままステージに上がり、何も知らない女優をナイフで刺して殺害する。悲鳴に包まれる劇場。既に出入り口は鍵を掛けられ、電話線も切断されている。逃げ出すことのできない劇団員たちを、フクロウマスクの殺人鬼は残忍なやり口で一人ずつ始末していった…。
ダリオ・アルジェントの弟子筋にあたるミケーレ・ソアビ監督によるマカロニ・スプラッター映画。冒頭の前衛的なダンスシーンや薄暗い精神病院、化粧室の壁に並んだ仮面といった映像から、殺した人間を着飾らせてステージ上に配置する犯人の異常さ加減まで、師アルジェントが全盛期だった頃の世界観が見事なまでに踏襲されており、凡百の殺人鬼映画にはない美しくも歪んだ雰囲気を終始漂わせていた。殺害シーンの出来も特筆モノで、ツルハシに斧にドリルにチェーンソーといった凶器の豊富さのみならず、ドリルが登場する時の見事なカメラワークや、チェンソーで肢体を切断する際の嫌らしい感覚、シャワールームで殺されている女性と目が合う後味の悪さ抜群なシチュエーションなど、どの場面も実に濃密でそれぞれが作品のクライマックスとなり得る程の力を持っていた。「密室内部での殺人鬼との戦い」というシチュエーションこそ取り立てて斬新なものとは言えないものの、それでいてこれだけ見応えのある作品を作ってしまうとは、ただただ監督の力量に脱帽するばかりである。
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