ナイトメア 「評価 A」
ジョージは奇妙な夢にうなされていた。ベッドでSMプレイに興じている男女の姿を子供が覗いたら、突然男女が血まみれになる──という理不尽で不可解な夢に。そしてその夢を見た後、ジョージは急に殺人の衝動に駆られ、誰彼構わず人を殺してしまうのだった。彼は殺人罪で拘置された後、精神病院で衝動を抑える薬を投与してもらったものの、それでも悪夢を拭い去ることはできなかった。夢がフラッシュバックされる度に残忍性に目覚め、相変わらず人を殺し続けるジョージ。彼はやがてフロリダの小さな町を訪れ、そこでも惨劇を巻き起こした…。
80年代初期のスプラッターブームの頃に製作されたサイコホラー。ジョージが何故奇妙な夢を見るようになったかという話と、彼の標的にされた家の話とが交互に展開する構成になっており、クライマックスになるとザッピングの間隔も短くなっていって話の緊張感を盛り上げている。ジョージの夢の正体は割と早い内に察しがついてしまうのだが、その種明かしをジョージと家の子供との対決シーンに頻繁に織り込むことによって、伝染していく狂気の様子が見事に表現されていたのには舌を巻かされた。またゴアな場面の出来も満足のいくもので、ベッドの上に転がる生首には切り口から動脈がのびていたり、全身青アザだらけの死体の上をネズミが這いまわっていたりと、死体の造形や映し方に丁寧な気配り(?)が窺えたのが嬉しかった。
ちなみに本作、特殊効果監督として「ゾンビ」「死霊のえじき」のトム・サヴィーニの名がクレジットされているが、彼は撮影現場の見学をしただけで実際に製作には加わっていないらしい。宣伝のために売れっ子の名前を勝手に使うような姿勢でこれだけの出来の作品を作ってしまうとは、まことに恐れ入るばかりである。
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