死霊の谷               「評価 B」
開拓時代のアメリカ。牧師のウィルたちは姦通の罪で村を追われ、新しい住処を求めて木々の茂る谷へとやってきた。谷には何者かが住んでいた形跡があり、ウィルたちは前の住民たちが残していった廃屋を拠点として生活を始めることにした。ところがしばらくして、谷の周囲に異変が生じ始める。奇怪な風貌をした悪霊たちが度々現れ、彼らを襲うようになったのだ。超能力を持つ少女リアはいち早く悪霊の存在を察知し、単身立ち向かおうとするが…。
外界とは隔絶された地を舞台に、無数の悪霊と超能力者とが壮絶な闘いを繰り広げるオカルトホラー。どうやら監督・脚本のアベリー・クロウンスはカメラマン出身らしく、そのためか映像の美しさは特筆もの。リアの超能力を画面の焦点をぼかすことによって、谷をうろつく悪霊たちをオーバーラップと彩度調節によって表現しているなど、独特のセンスで描かれるイメージの数々が印象的だった。そして画面効果のみならず、大量の羽毛が散りばめられた木や、ツタと虫に覆われた悪霊の造形といった美術面でも制作者の拘りが感じられ、これらによって形成される特有の作品世界には思わず魅せられた。ただし一方で脚本には難があり、基本的なストーリーラインは単純だというのに、後半になればなるほど出来事の断片を繋げたような構成になっていくために場面ごとの繋がりを理解するのにひどく苦労を強いられる。またそのせいでクライマックスにおけるリアと悪霊との対決シーンも盛り上がりに欠け、折角の映像美が生かされていないように感じられたのも残念なところだ。

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