パニック・イン・ザ・タワー      「評価 D」
ある晩、大学の研究施設でサムたち数名の学生がゲームをすることとなった。それはトランシーバーからの指示を頼りに宝を探していくという他愛の無いものだったが、思わぬ乱入者の存在によってゲームは恐るべき惨劇へと変貌した。副腎皮質刺激ホルモンを脳に注入されたことによって凶暴化したヒヒ・シャクマが檻から抜け出し、参加者の学生たちに襲い掛かったのだ。異変に気づいたサムたちは研究施設から脱出しようとするが、施設を出るための鍵が見つからない。その間にも犠牲者の数は増えていく一方で、やがてサムはシャクマと対決する意志を固めるが…。
「キリマンジャロの悪魔」に並ぶ、世にも珍しいヒヒ映画の一本。全編を通してヒヒの凶暴さが存分に描かれているのが見所で、ドアに向かって全力で突進してきたり、戸棚の板をバリバリ剥がしたりと、怒り狂ったシャクマの暴れ様には思わず息を呑んでしまうほどの迫力があった。「ドッグ」や「ヘル・キャッツ」など、本物の哺乳類動物を使用した生物パニック映画は何かと描写が大人しめになりがちだが、この作品にはその欠点が殆ど感じられないのが素晴らしかった。
ただしこの映画、シチュエーションの不自然さが気になった。さっさと警察に電話すればいいのに、クライマックス直前になるまでサムたちはまるで電話をかけようとはせず、かけないことに対する説明もない。おかげでシャクマから必死で逃げ回るサムたちの姿を見ても、どうもスリルを味うことができなかったのだ。また序盤で繰り広げられるゲームが全然楽しそうに描かれておらず、映画への求心性を著しく欠いていたのも問題だ。さすがにこれらの欠点をヒヒの魅力だけで補うことはできず、全体的に見たら今一つな印象の作品となっていた。

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