驚異の透明人間 「評価 D」
金庫破りのファウストが、クレナー率いる犯罪組織の手引きによって刑務所から脱走した。彼ら組織は人間を透明化させる装置を用いて完全犯罪の強盗を働こうと企んでいたのだが、透明化に必要な放射性物質X13はまだ大した量が集まっておらず、せいぜい一人を透明化させるのが精一杯だった。そこでクレナーはファウストに目を付け、透明化させた彼を政府の施設に送り込み、貯蔵庫の中からX13を持ってこさせようとしたのだ。事情を聞いたファウストは礼金をはずむことを条件に彼らの要求を引き受け、X13の放射線を浴びて透明な体を獲得した。そして彼は政府の施設へと赴くが、X13から出る放射線は、決して人体に無害なものでは無かったのである…。
「惑星Xから来た男」のエドガー・G・ウルマー監督によるSFサスペンス……のはずだが、突っ込みどころ満載の脚本はどう見てもコントで、真面目に観賞しようとすると確実に脱力してしまう作品だった。例えばこの映画、透明人間となったファウストの行動がお馬鹿そのものだ。いくら自分が透明になっているからって、盗み出した物品を持ったまま普通に立ち去ろうとしてはいかんだろう。盗んだ物品は他の人間の目からはプカプカ浮いているように見えており、明らかに透明で無いときよりも目立っている。しかもそこを警備員に見られ、物品を掴まれて一悶着──なんてコメディ映画そのものな展開まで用意されているときては、呆れるあまり全身の魂が抜けるような感覚に襲われてしまった。また犯罪組織の行動も杜撰で、X13の有害性をまるで確かめていなかったり、取り引きが成立しないうちにファウストを透明化させたものだから彼の主張する条件を呑まざるを得なくなったりと、これまたギャグにしかなっていない。そしてラストは強引すぎるオチで締められており、最後の最後まで腰が砕けっぱなしだった。サスペンスとしてでなく、出来の悪いコメディと思って観た方が良いだろう。
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