マッシュルーム 「評価 B」
下宿業を営んでいる二人の老婆ミニーとフローは、万引きの常習犯。いろんな店から商品を掠め取ってきては、それを使用することによって生計を立ててきた。しかしある日、彼女たちの店に下宿を借りたいと申し出てきた男がいた。彼はその名をグラブといい、指名手配中の凶悪強盗犯だったが、万引きの事実を知られてしまった二人は不本意ながらも彼を匿うことに。更にグラブを捜索中の老刑事ハリーまで下宿人として住まうようになり、ミニーとフローはいつ犯人を匿っていることがばれるかと緊張モノの生活を強いられることとなったのである。ところがその翌朝、ベッドで寝ていたグラブは、ガス漏れ事故によってポックリ死んでしまった。彼の死体を発見したミニーとフローは、その処分方法に悩んだ挙句、ミンチにして家畜の鶏に食べさせることにしたが…。
一つの死体が巻き起こす珍騒動を描いた、アルバトロス発のグルメホラー映画。二人の老婆が人肉を調理する映画としてはアルバトロス・コアの「カンニバルシスターズ」なんてのもあったが、本作の方は「カンニバル〜」と違って全体的にコメディ調で、陰惨さが殆ど感じられないのが特徴だ。ミニーとフローはあっさり罪の意識を取り払ってしまうほどにポジティブな性格をしているし、人肉を直接食べる場面は一度しかなく、それ以後は人肉を餌として与えられた鶏やその卵を調理して食べるので、食人描写による衝撃性も大幅に抑えられていた。特に中盤における「ミンチを鶏に与える→鶏が卵を産む→卵を料理する→それをみんなでモリモリ食べる」の繰り返しは、卵料理が本当に美味しそうに撮られていることもあって、これが食人映画であるのを忘れてしまいそうになるくらいだ。そのためカニバリズム描写に慣れた身としては少々物足りなかったが、作品自体が二人の老婆と老刑事とが織り成す騒動を和やかなムードで綴るというコンセプトなので、逆にこの薄味の描写が作風にマッチしているようにも感じられた。
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