悪魔の植物人間(別題:ザ・フリークメーカー) 「評価 B」
突然変異の神秘に魅せられてしまった大学教授ノルター。彼は人間と植物とを合成させたハイブリッド生物の創造に熱意を燃やし、見世物小屋の座長リンチに実験体となる若者を攫って来させ、遺伝子改造手術を施した。しかしなかなか完璧な植物人間は誕生せず、おぞましい失敗作が出来ては見世物小屋に送られていく。そんなある晩のこと、ノルターの教え子であるトニーは見世物小屋に侵入していたところをリンチに捕まり、ノルターの研究室へと送られた。手術は遂に成功し、トニーは初の完璧な植物人間となる。しかし当のトニーにとってはそんなの名誉でも何でもなく、彼はノルターの施設から脱走。変わり果てた姿で町を彷徨うのだった…。
「ハロウィン」のルーミス医師ことドナルト・プレザンスがマッドサイエンティストを演じる、「フランケンシュタイン」と「フリークス」をミックスしたような内容のSFホラー映画。ハイブリッド生物となったトニーは頭髪が剥げ落ち、口はアサガオのようなラッパ状となり、肋骨を食虫植物のように開いては人間を食らう。肋骨の下にはタコの吸盤みたいな器官がズラリと並んでいたりと中々グロテスクなのだが、いかんせん登場する場面が短すぎた。もっと今の姿に悩んでいるシーンなどがあっても良さそうなのに、友人達の前にチラリと姿を見せた他は、橋桁の下で浮浪者を襲ったのとクライマックスでノルターの研究室に侵入したぐらいで、ろくに画面に出てきてくれないのである。 しかもクライマックスの暴れ方もいまいち物足りず、インパクトのある顔に反して大した見せ場を作れなかったのは辛かった。
そんなトニーよりも作中で存在感を放っていたのは、見世物小屋で働く人々として大挙出演している本物のフリークスたちだ。ヒゲのある女、全身毛むくじゃらの猿女、足の骨が未発達なカエル男、肌がカサカサのワニ女、目玉の飛び出す男、全身ガリガリの激やせ女、そして関節の位置が異常な小人と、本家「フリークス」以上にバリエーションに富んだ奇形人間の姿を拝むことができるのだ。そんな彼らが続々と登場する見世物小屋の場面はこの上なく衝撃的で、特殊メイクによる植物人間は完全に霞んでいた。しかも終盤にはパーティーを台無しにしたリンチにフリークスたちが制裁を加えるという本家「フリークス」ばりの展開になり、フリークスの皆さんが次々とリンチにナイフを投げていって最後は犬の餌にしてしまうという戦慄モノのシーンまで用意されているときた。フリークスたちの内輪揉めのエピソードは作中ではオマケ的な扱いなのだが、こちらの方がフリークスの悲哀などもしっかり描けていた分、本筋よりも遥かに印象に残ってしまったのである。
因みにこの映画、本編はかなりの際物であるにもかかわらず、オープニングの方は水面に落ちる雫、地中深くに根を下ろしてから芽を出していく小さな種と、自然の美しさを湛えたような映像が続いて何とも上品。そこから大学の講義室でノルターが食虫植物の生態を映像付きで説明するシーンへと入るので、冒頭で「THE FREAK MAKER」とタイトルが出てなかったらディスカバリーチャンネルか何かの番組と間違えてしまいそうだ。そんな導入部分と本編とのギャップも、また楽しい作品だった。
(それにしてもこの「自然は素晴らしい」というオープニング、植物人間の恐怖感が本物のフリークスに遠く及ばないことを暗に示しているのでは……)。

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