悪霊のいけにえ 「評価 D」
キャンプ場の近くに住む青年、トミー・マグルーは苛められっ子だった。知恵遅れ気味な彼を同級生達は毎日のように罵り、暴行を加えてきた。けれどもトミーは彼らに抵抗することもできず、たった一人で大好きな海賊ごっこに興じ、辛い現実から逃避する生活を過ごしていたのだ。しかしクリスマスの晩、両親が彼に海賊の眼帯をプレゼントしたことから、彼の人生は大きく変わることとなった。眼帯をつけたトミーは海賊気取りの猟奇殺人鬼へと変貌し、かつて自分を苛めていた同級生たちを次々と惨殺していったのである。やがて身の危険を感じた同級生達は一致団結し、「殺られる前に殺れ!」とトミーに立ち向かう決意をするものの、神出鬼没なトミーはそんな彼らを嘲笑うかのように、一人また一人と毒牙にかけていった…。
あの大駄作「悪魔のえじき2」の製作スタッフによる、これまた素人感丸出しな作りが戦慄を誘うスプラッター・ホラー映画。いきなりトミーが金髪女性の内臓をコネコネと弄んでいるだけの様子を2分近くも映し続けるという正気の沙汰とは思えないオープニングから始まり、それが終わると今度は、キャンプ場に車を止めたカップルがトミーの生い立ちについて事細かに説明するシーンが5分以上も続く(この時、トミーの幼少時代の姿がカットインされるなんて気の利いた演出は一切無く、本当にダラダラと喋っているだけ)。そしてカップルが呆気なくトミーに殺されたかと思うと、次はモノクロの静止画に二人が殺されたことを報じるキャスターの声が被さるだけの場面が4分近く続いて──と、全然動きのない映像がこれでもかこれでもかと流されるものだから、観ている側としてはたまったものではない。
しかもそんな拷問のような前半部分を死ぬ思いでやり過ごしても、まだ安心はできなかった。映画の中盤、団結した同級生たちはトミーに対抗する策を練るわけでもなく、何故かキャンプ場で好き放題に遊び出す。そして勝手にバタバタと、トミーに殺害されていくのである。この辺りの部分は一応殺人鬼モノのテンプレートに添った進行がなされるので、映像的には退屈さを感じなかったものの、同級生たちの理解不能な行動には戸惑うばかりだった。この他にも、トミーが地面に落ちていたミキサーを振り回すだけという意味不明なカットや、チェーンソーの音には気づかないのに木の枝を踏む音には気づくという不可解な演出、作り物っぽさ抜群な人間の舌など、駄目な要素が洪水のように溢れ返っているこの映画。エンディングのNGシーン集(!?)ではキャストたちが実に楽しそうに撮影している様子が窺えたものの、出来た作品からはその万分の一の楽しさすらも見出すことはできなかった。本作のDVDに映像特典として収録されていた短編「フランク・ウォンのあだ討ち」の方が、遥かに面白いと断言できるだろう。
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