ロウヘッド・レックス         「評価 C」
アイルランド辺境の田舎町ラスモア。宗教の研究をしている学者ハワード・ハーレンベックは田舎に根付く豊穣信仰を調べようと、家族と共にこの町へやってきた。ところが町のオヤジたちが平原に置かれていた巨石を退けたことによって、町は忌まわしき惨劇の場となってしまった。石の中にはキリスト教が伝播する以前に神として崇められていた怪物「ロウヘッド」が封印されており、それが再び息を吹き返したのである。町の人間を次々と襲い、血祭りに挙げていくロウヘッド。ある晩そのおぞましき姿を目撃したハワードは、警察に「怪物が殺人をしている」と証言したものの、当然信じてはもらえず門前払いにされる。失意のハワードは家族と共に町を去ることを決めたが、その矢先に息子ロビーがロウヘッドの手によって惨殺されてしまい、復讐心に燃えた彼はロウヘッドと戦うことを決意した…。
クライブ・バーカーの「髑髏王」を原作とし、バーカー自身も脚本を書いたスプラッター映画。ロウヘッドはもぎ取った首を誇らしげに掲げたり殺した人間を逆さ吊りにして放置したりと、蛮族らしい雰囲気を存分に滾らせていたのが印象深い。ただ問題はその外見で、素肌が妙にツヤツヤしていて被り物っぽさ丸出しなのはどうかと思った。また眼が赤く光るギミックも、幾ら作品の重要なファクターになっているとは言え、実際に画面で見ると安っぽく感じられてしょうがない。おかげでロウヘッド自身の恐怖感が非常に薄められており、むしろ彼に心酔する堂守デクランの方が何倍も怖いという、何とも情けない状況になっていた。
しかしこの映画で一番凄まじいのは、映画の内容と全然関係の無いビデオの解説文である。以下がその全文だが、これを書いた人は本当に映画を見て書いたのだろうか。疑問に思えてしょうがない。
(以下原文ママ)
地質調査を兼ねてアイルランドの田舎を旅していたハーレンベック博士と彼の家族は、途中立寄った町で不思議な石を発見した。人里離れた山合いの町の古びた館にあったこの石は、なんとも奇妙で不思議な輝きを持っていたが、この石を調べるうちに博士はある伝説に出くわす。なんとこの石は数万年前に地上を支配していた魔王を封じ込めた石だというのだ。しかし、博士がこれを知った時、町ではこの館を壊そうとする計画が持ち上がっていた。壊せば魔王が復活する。博士は町の人々を説得するが誰も聞き入れない。一度は町を立ち去ろうとした博士だったが、最愛の息子をその魔王に殺されてしまった時彼は魔王との闘いを決意する。勝ち目のない、そして絶望的な闘いを………。
映画には「古びた館」なんて出てこないし、ハーレンベックは地質学者じゃないし、また彼はロウヘッドが封印されていた石を見てすらいないし、そもそもロウヘッドは数万年前に地上を支配なんかしていない。あまりものテキトーな文章に、ビデオバブル期のいいかげんな風潮を感じずにはいられなかった。
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