トカゲ女              「評価 C」
女流ホラー作家のクワンは、ある田舎町での講演会に出席した際、骨董品の小さな木箱を入手した。だがその日から彼女はトカゲの幻覚に悩まされるようになり、また周囲の人間が次々と原因不明の怪死を遂げるようになった。実はあの箱にはトカゲの悪霊が封じ込められており、悪霊は新たな箱の持ち主となったクワンに憑依しようとしていたのである。やがてクワンは完全に悪霊に乗っ取られてしまい、彼女の身体は世にもおぞましいトカゲ女へと変貌する。蝿を食べ、生き血を啜り、人間の心臓を貪るトカゲ女には、どんな除霊師が対抗しようとしてもまるで歯が立たず、尽く返り討ちにあって殺されていくばかり。そんな中、彼女の恋人であるウィトゥーンはトカゲ女にも人間の心が残っているに違いないと考え、彼女を説得しようと試みるが…。
「マッハ!」や「バトル7」のソムサック・デーチャラタナプラスート製作総指揮による、世界全国津々浦々のオカルト映画をごちゃ混ぜのビビンバにしてしまった怪作。とにかくそのごった煮具合は半端でなく、悪霊に憑依されたクワンが除霊師に対して下品な言葉を放ったり、変死した死体の写真を撮ったらトカゲの影が映っていたり、地面から飛び出てきた手が男の足首をつかんだり、白い装束と顔の前に垂れた黒髪という貞子チックな霊が出てきたりと、本当にやりたい放題といった感じ。そんな何処かで観たような場面のオンパレードに加え、目玉が抉れる、バケツ一杯分ぐらいの血を吐き出すといった如何にも東南アジアらしいエグい要素もしっかり取り込んでいるものだから、作品はまさにオカルト映画の万国博覧会な様相を呈していた。ただそれで怖い映画になるかどうかは別問題で、あまりに露骨な引用が多いものだから完全にネタ映画の領域に突入しており、怖がる以前に笑いがこみ上げてきてしまう。またCGのレベルが「キングスパイダー」級で、人間に襲い掛かるトカゲの群れなんかを見ていると和んで和んでしょうがなかった。それでもオカルト映画好きならば、話の種として観ておいて損は無い作品だ(あと、木から木へとムササビのように飛び移るトカゲ女の勇姿は必見です)。

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