ミル・マスカラスの幻の美女とチャンピオン「評価 C」
メキシコの国民的スポーツといったら、何と言ってもプロレスだ。この日の晩も、ミル・マスカラスらスター選手が出る試合を観戦しようと、会場には大勢の観客が詰め掛けていた。だがそこへ、突然マシンガンの銃声が。たちまちレフェリーは蜂の巣にされ、マスカラスもまた負傷してしまった。銃撃を放ったのはマッド・サイエンティストのマノ・ネグラ率いる小人軍団に違いないと悟ったマスカラスは、親友のブルー・デーモンやメディコ・アセシーノたちと共に、彼らに対する警戒を強めることを決めた。しかしそれを嘲笑うかのように、小人軍団は後日、マスカラスたちが観客として来ていたミスコンの会場にも侵入し、出場した美女達を尽く攫っていったのである。美女達を助け出そうと必死になるマスカラスたち。ところが、これは全てマノ・ネグラの罠だった。彼はプロレスのスター選手全員を捕まえて洗脳し、自らの従順な手下にしようと企んでいたのだ…。
メキシコマット界のスターであるミル・マスカラスが、「聖人」エル・サントの親友として一部で有名なブルー・デーモンと共に獅子奮迅の大活躍をするレスラー映画。覆面レスラーの集団がバイクに跨って夜の公道を疾走している濃厚なオープニングに始まり、五分ぐらいかけてじっくり映される試合シーン、全員赤いマント姿で怪しさ抜群の小人軍団の登場、そして大した根拠もなく「黒幕はマノ・ネグラに違いない」と断言するマスカラスと、開始早々凄まじい場面のオンパレードで、軽いカルチャーショックを受けること請け合いである。更にミル・マスカラスを始めとする実在の覆面レスラーたちは、当然のことながら徹頭徹尾マスクを装着したまま。背広を着てオフィスにいても、パジャマ姿で眠っていても、海パン一丁でバカンスを楽しんでいても、絶対にマスクを外さないのだ。我が国にも覆面レスラーの議員がいるが、覆面を被ったままオフィスで電話の受け答えをするブルー・デーモンの姿からは、何とも言えぬ間の抜けた味わいが感じられた。
ストーリーはあって無いようなもので、マスカラスたちと小人軍団とのプロレス勝負が繰り返されるだけの内容と言っても何ら差し支えは無い。ただ時折登場するマノ・ネグラの発明品が、どんな軟派なチャラ坊も一瞬でプロレスの達人に早変わりさせてしまうカプセルやら、撃った相手の動きを止める光線銃やら、非常にチープな感じでなかなかに楽しませてくれる。2003年に製作されたレスラー映画のパロディ作品「ゾンビキング」と併せて見たい作品だ。


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