パニック・アリゲーター 悪魔の棲む沼 「評価 B」
アフリカの大密林でひっそりと生活していたクーマ族。起業家のジョシュアは彼らと手を結び、大自然を満喫できるリゾート施設「パラダイス・ハウス」の建設に着手した。間近でワニを観察できるクロコダイル橋、川遊びができるターザン筏、毎晩行われるクーマ族のショーなど、多彩なアトラクションを取り揃えてオープンしたパラダイス・ハウス。たちまち連日多くの客が押し寄せてくるほどの人気スポットとなり、記者のダニエルもこのリゾート施設へと取材に訪れた。ところがある朝、クーマ族のカヌーが川岸に漂着しているのが見つかったのを皮切りに、パラダイス・ハウスでは奇妙な事件が続発するようになった。クーマ族が全員ジョシュアたちの前から姿を消したかと思えば、ヘリは川に落とされ、無線のケーブルが切断され──と、外部との連絡が絶たれてリゾート施設は孤立してしまう。そこでダニエルは従業員のアリと共に事件の原因を探ったところ、ある恐ろしい事実に辿り着いた。クーマ族が神と崇める巨大アリゲーターが、ある晩カヌーに乗っていた部族の青年を食い殺した。するとクーマ族はそれを神の怒りと見なし、怒りを抑えるために余所者たちを皆殺しにしようと決めたのである…。
70年代後半の動物パニック映画ブームの頃に製作された、マカロニ生まれのワニ映画。イタリア映画界お得意の秘境探検映画のエッセンスも加わった異色作で、ピーピー鳴く可愛い仔豚がワニの餌として川に投げ込まれたり、原住民が炎を囲んで怪しい儀式をしていたりと、極めて濃ゆいシーンが頻繁に出てくる。さすがに食人の場面こそ存在しないものの、クライマックスでは怒り狂ったクーマ族の面々が手に手に武器を持って白人たちを追い回しては虐殺するという阿鼻叫喚の地獄絵巻が見られ、その恐怖感は主役のはずのアリゲーターをも遥かに凌いでいた。
また魅力的な登場人物が多いのも本作の特長。ボンド・ガールのバーバラ・バック演じるヒロインのアリは言うに及ばず、おマセな女の子ミノウや、来訪客を崖から見下ろしては「わしがジョナサン神父だぁぁぁっ!」と自己紹介するこれまた濃ゆい宣教師ジョナサンなど、彼らのおかげで映画全体の印象もぐっと良いものになっていたのだ。
ただ残念なのが、肝心のアリゲーターが水槽丸出しな特撮&ろくに動かないハリボテのおかげで著しく迫力に欠けていた点だ。筏に掴まった状態での水上の戦いや、川に沈んだワゴンからの決死の脱出など、襲撃シーンは色々とシチュエーションに凝っているものの、それでもアリゲーター自身の魅力を補うまでには至らなかった。

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