デッドウォーター 「評価 B」
テネシー州テリコプレインズ。ネイスン一家が経営する小さな農場に、ある晩小さな隕石が降ってきた。隕石はやがてドロドロに溶けて地面へ染み込み、一家が使用する井戸水と混ざり合う。それでも住民らは特に気に留めず、いつもどおりに井戸水を飲み、また作物や家畜に与え続けていたものの、これが思わぬ惨劇を生むこととなった。実った作物はことごとく虫にたかられ、家畜たちは野獣のごとく暴れ出す。そして水を飲み続けていた家族の面々も、日増しに皮膚が爛れて狂人と化していったのだ…。
H.P.ラヴクラフトの「異次元の色彩」が原作のSFホラー映画。水を飲んだ動物や人間が凶暴化──というプロットは「猛獣大脱走」みたいだが、本作は水が異常事態を引き起こしていく過程を丁寧に描写していくことで、まるで異なる印象の内容となっていた。しかもトマトに包丁を入れたら果肉が血のように噴き出すのを始め、鶏の大群に襲われて血まみれになったり、狂人となった母親が布と自分の皮膚とを縫い合わせたりと、それぞれの異変が非常に陰湿に描かれており、何とも見応えがあるのだ。とりわけ壮絶なのは虫関連の場面で、リンゴの断面から本物の蛆虫たちが湧き出すだけでも既に十分気色悪いというのに、牛の皮膚が弾けて蛆虫やらゲンゴロウやらが大量に飛びかかるカットなんか出されてはあまりのエグさに狂乱してしまう。これらのカットだけを見れば「スクワーム」や「スラッグス」にすら一歩も引けをとっていないほどだ。そして狂人化した家族のメイクも、無数の出来物が顔を覆っているのが妙に生々しくて気持ち悪さを演出している。クライマックスは少々盛り上がりに欠ける感があったが、グロテスクな描写を堪能するにはうってつけの作品だ。
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