テラービーチ 髑髏軍団美女虐殺 「評価 C」
海岸の古めかしい田舎町へとやってきた、ヘンリーとジョーンの夫妻。彼らはここで医者を開業しようとしていたのだが、何故か町の人たちは二人に対して排他的だった。更に真夜中なのにカモメの鳴き声が聞こえてきたり、黒いローブを纏った住民たちが毎晩海岸を歩いていたりと、町は怪しげな謎に満ち満ちていたのである。そんな中、ヘンリーは知恵遅れの青年テディの口から、この町で行われている生贄の儀式のことを聞きだした。何でもこの町では七年に一度、海辺の教会跡から中世のテンプル騎士団が七日間だけ死霊となって蘇り、夜ごと町の住民を恐怖に陥れるらしい。それを回避するために七年が経つと住民たちは毎晩一人ずつ、合計七人の町娘を海岸に縛り付け、死霊たちに対する生贄となってもらっていたのだ。そして今晩生贄となるのが二人に親切にしてくれた女性ルーシーだと知ったヘンリーたちは、急いで海岸まで赴き、彼女を助け出した。だがこのことによって、彼らは怒り狂った死霊たちに付け狙われることとなったのである…。
カルトとして名高いスパニッシュゾンビ映画「エルゾンビ 落武者のえじき」の続々々編。ボロ布を纏って馬に跨り、颯爽と獲物を追い回す屍の群れ──という、従来のゾンビ映画とは一線を画すスタイルは本作でも健在で、薄暗い海岸を駆け抜ける様子を斜め上のアングルから捉えたカットは実に幻想的。また余所者に対して頑なに口を閉ざし続け、秘密を漏らした者へ無言で制裁を加える住民たちの姿は、領主による排他的な支配が置かれていた中世社会をまんま彷彿とさせ、作品の持つゴシック調な雰囲気を一段と際立たせていた。しかしこの映画で一番印象に残るのは、そんな死霊たちでも住民たちでもなく、主人公夫妻の非情性である。映画のクライマックス、家に立て篭もっていたヘンリーたちに死霊たちが襲い掛かるという場面で、一緒に篭城していたテディが侵入してきた死霊に捕まってしまう。けれどもヘンリーもジョーンも全く彼を助けようとはせず、家の外へ連れ出されて殺されていくテディを完全に放ったらかし。まあ、これは助けようとしたら自分も殺されるかもしれないから仕方ないとしよう。だがその後の、教会跡に向かうためにルーシーと共に三人で馬に乗って海岸を駆ける場面はさすがにどうかと思ったぞ。ルーシーが落馬して死霊の群れに捕まっても、二人は振り向きさえしないのだ。教会跡に着いた二人はルーシーが殺されたことに対して「彼女は掟を破ったから殺されたんだ」と言うだけで、少しも悲しむ様子が無い。ならどうしてアンタ達はルーシーを助けたんだよ、と突っ込みたくなること確実な珍場面であった。
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