ナイト・オブ・ザ・コメット         「評価 A」
クリスマスの晩、果てしなく細長い軌道で周回している彗星が6500万年ぶりに地球へと急接近してくるらしい。そこでロスアンゼルスの人々はパーティーをしながら夜空を眺め、彗星がやってくるのを今か今かと待ち続けていた。そして、いよいよやってくる彗星。空は七色に輝き、人々はその幻想的な光景に見とれるばかり。ところが彗星が過ぎ去った時、地上から人類の大部分は消滅していた。彗星の光には、浴びた生物を瞬く間に灰へと変える効果があったのだ。また辛うじて灰化を免れた人間も次々とゾンビとなっていき、理性を失って共食いを始めるように。ロスアンゼルスは、ゾンビたちが跋扈する無法地帯となってしまったのである。だがそんな中、映画館でバイトをしていたレジーナは、金属の壁に囲われた映写室でクリスマスの一夜を過ごしたために灰化もゾンビ化も免れていた。彼女は同じく生きていた妹のサマンサと共に、人のいなくなった世界で懸命に生きていこうと決意する…。
「人類SOS」や「28日後…」など、主人公の気づいた時には大規模災害によって人間が滅びかかっていた──というシチュエーションの作品は数多くあれど、主人公たちがここまでポジティブな作品はそうそう無いだろう。レジーナとサマンサは、こんな壮絶な状況下に置かれても常に前向き。たとえ生き残りの暴徒に出くわしても、ゾンビに襲われても、科学者たちの団体と衝突する事態になっても、決して絶望などせず、ショッピングモールで衣服を漁ったり記念写真を撮ったりと思い思いの生活を送るのである。しかもそんな彼女らの姿を感動的に捉えようという雰囲気が本作からは全く感じられず、むしろ極めてノリノリなテンションで綴られていたものだから、観ているこちらも彼女たちと同様に楽しくなってくるのだ。ゾンビの出番が驚くほど少ない上、クライマックスも著しく盛り上がりに欠けるものの、他の終末系SF映画へのアンチテーゼとも取れる内容が非常に楽しい作品だった。

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