スポンティニアス・コンバッション 人体自然発火「評価 C」
1955年、ブライアンとペギーの夫妻は人体の放射能耐性を高めることを目的とするサムソン計画に参加した。二人は水爆の放射能を間近で受けるという危険極まりない実験の被験体になったが、実験後の二人の放射能は正常値を示し、計画は無事成功を見たのである。その後、ペギーは子供を身篭った。夫妻は子供にデーブと名付けて生まれてくるのを心待ちにしていた。ところが赤ん坊が生まれたその日、彼らの体は激しく燃え盛り、一瞬のうちに焼死してしまったのだ。それから30数年後、サムと名を変えた息子は立派に成長し、体温の高さに悩みながらも幸せな人生を送っていた。しかし近所に原子力発電所が建設されるに前後して、彼に接触した人物が次々と自然発火で死んでいく事件が発生した。サム自身もまた感情が高ぶると身体から炎が噴き出すようになったので、恋人のリサの勧めで病院へ行くことに。だがこのことが切っ掛けとなり、サムは自分が巨大な陰謀に巻き込まれていることを知る…。
「悪魔のいけにえ」「スペースバンパイア」のトビー・フーパー監督が、人体自然発火を題材に製作したSFサスペンス映画。主人公のサムは体の至る所から炎を発射して立ちはだかる人間を攻撃する他、電話の向こうの相手を発火させるという怪奇大作戦の「恐怖の電話」さながらな芸当も披露してくれる。しかし炎上する時の特殊効果は安っぽい合成のみで、炎を使った攻撃も後半になってくると些かマンネリ気味になり、人体発火というモチーフを十分に生かしているとはあまり言えなかった。
またこの映画、1955年を舞台とした導入部分こそ、プロパガンダ映画の使い方といい、焼死体の中から縮小した頭蓋骨が出てくる不気味さといい、製作者の確かなセンスが窺えるものだったが、話が現代に移ってからは調子が一気にトーンダウンしていた。人体発火のメカニズムについて説明不足なのが気に掛かってストーリーへの求心性が弱まり、そしてサムの日常部分が殆ど描かれなかったおかげで、後半になって暴走していく彼の様子にいまいちのめり込めないのだ。人体発火の描写についても脚本についても、面白さを引き出せていない印象の作品だった。
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