スウォーム             「評価 D」
アメリカの砂漠地帯に建てられている、米軍軍事基地。ある日そこに駐屯していた兵たちが、アフリカバチの大群の襲撃によって瞬く間に死に絶える事件が発生した。アフリカバチの群れはその後も移動を続け、山間の田舎町、鉄道、発電所、そしてヒューストンを次々と恐怖に陥れていく。政府から対策を任された昆虫学者のクレインは恩師のコナーズと協力して策を巡らせるが、それも功を奏さず被害は拡大していくばかり。そしてヒューストンが壊滅した時、クレインは最後の反撃に出る…。
アーウィン・アレン製作による豪華スター総出演の超大作蜂映画。さすがに「恐怖の殺人蜜蜂」や「キラー・ビー」といった当時製作された他の蜂映画群と比べても桁違いの予算が投入されているだけのことはあり、文字通り空を覆い尽くしたり海上に集まって一つの島を作っていたりと、何百万もの蜂の大群がスケール感溢れる描写によって壮大に表現されていたのは見物だった。またパニック映画の定番キーワードである「田舎町の祭り」が、本作においては住民の避難を遅らせる要因とはなっておらず(それどころか住民たちは避難警報に素直に応じている)、それ自体が災害を引き寄せるものとして機能しており、今見ると結構斬新に感じられた。
しかしこの映画、列車の場面では蜂の大群に驚いた運転手が誤ってブレーキを解除し脱線事故、発電所の場面では全身蜂まみれになった男がうっかり制御ボタンに触れて大爆発──と、蜂の大群のスケール感溢れる描写に対し、実際の災害が人間による副次的なものばかりで、パニック映画にしてはどうにもみみっちい印象は拭えなかった。中でも酷かったのはヒューストンの場面で、軍隊は火炎放射器で蜂の大群を焼き払おうとするのだが、タンクローリーのすぐ近くで火炎放射器を使っては大爆発、狭い通路の中で火炎放射器を使っては他人が焼死といった感じで、「それぐらい予想できないのか!」と思わず突っ込みたくなること必至である。
更に「蜂たちには最早どんな毒物も通用しないんだ」といった台詞がろくに根拠も示されずに飛び出してきたり、散々環境に被害を与えないで蜂を退治しようとしてきたクレインが最後に壮絶な環境破壊をしていたりと、矛盾に満ちた脚本も困りもの。「ポセイドン・アドベンチャー」や「タワーリング・インフェルノ」で栄華を極めていたアーウィン・アレンが本作を機に凋落して行ったのも頷ける内容の作品だった。

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