マジカル・クリスマス 狂気の暴走ライダー 「評価 D」
テオ・アイトケンは魔術一筋の人生を送ってきた凄腕のマジシャン。今度の大晦日も町の劇場でマジックショーが行われることが決定しており、その練習に日々励んでいた。テオにはまた、彼の影響で魔術師を目指すようになったベンという孫がいた。しかしベンはデート中に起こったトラブルが原因で、町の珍走団に付け狙われることとなったのである。悪辣な珍走団たちはベンの家で行われていたクリスマスパーティーの会場にも乱入してきて、楽しいはずのパーティーを台無しにした。これで怒らないベンではない。彼はテオと協力し、カラクリだらけのマンションに珍走団の面々を誘い込む計画を打ち立てた…。
「マジカル・クリスマス」というタイトルだけ聞くと家族向けのファンタジー映画っぽいが、副題の「狂気の暴走ライダー」は若者向けのバイオレンス風味。本題と副題との温度差が激しく、誰に向けて製作された映画なのかさっぱり分からない邦題だ。そこで私は内容が気になって本作を手に取ったのだが、この珍妙極まりない邦題、実は物凄く作品内容を表していたものだった。と言うのも本作は、「悪者を魔術で懲らしめるマジシャン」というプロットでファミリー受けを狙い、同時に暴力とセックスにまみれた珍走団の描写で若者受けを狙った、何とも欲張りな映画だったのである。しかし二兎を追うものは何とやらとは良く言ったもので、本作はどちらの要素も中途半端に感じられたのが悲惨だった。ファミリー向けにしてはベンと父親との対立話が消化不良気味だし、若者向けにしては珍走団への復讐シーンがぬるすぎる。本作の製作者は万人受けする映画を目指したのだろうが、各ターゲットが求めているものを明確に示せなければ誰も見向きをしてくれないのである。映画を製作するにおいて、想定したターゲットの需要に応えることが如何に大切かを思い知らせてくれる作品だ。
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