シンジェノア            「評価 C」
サイバー・ディーン社が極秘に開発していた生物兵器シンジェノア。人間と機械のハイブリッドであるこの兵器は高い知能と強い腕力を兼ね備えており、じき発生するであろう中東を舞台にした大戦において、従来の兵士に代わるものとして大々的に売り出されるはずだった。ところがある日、広告係のミスで一体のシンジェノアが外に放たれてしまった。シンジェノアは己の帰巣本能に基づき、生みの親であるイーサン・バレンタイン博士の自宅を訪れて博士を殺害。それを知ったサイバー・ディーン社長のカーターは、すかさず報道機関と警察に圧力をかけてこの事件を闇に葬ろうとしたものの、イーサン博士の姪のスージーは事件の現場を目撃していたのである。警察が叔父の死に対して全く動かないことへ疑問を感じたスージーは、新聞記者のニックと協力し、会社の陰謀を明らかにしようと動き出した…。
「バイオ・スケアード 悪魔の遺伝子」にて誕生したモヒカン怪物シンジェノアが、再びスクリーンへと舞い戻ってきた。前作では遺伝子操作が生み出した怪物という触れ込みだったシンジェノア、今回は「人間と機械の融合兵器」と設定が一新されている。ところが映画を見る限り、このシンジェノアに兵器としての実用性があるのかは正直疑問が残った。「シンジェノアは人間の脳髄を吸わなければ生きていけない」という設定が本作でもそのまま引き継がれており、実戦でシンジェノア一体を動かすにはコストがかかりすぎるように感じられるのだ。またシンジェノアの群れが一般人の放つ銃弾を浴びてバタバタ死んでいくシーンがあるのも考えもの。確かに前作のシンジェノアだったら銃弾を受けて呆気なく死にそうだが、本作のシンジェノアは「それくらいで死なない」と作中で明言されているのである。それに幾ら砂漠で活躍するのを想定しているとは言え、新しく設定された弱点がアレなのも実用性の面で考えたら大きな問題だ。──といったように、要するに本作のシンジェノア、兵器としては欠陥だらけなのである。おかげで最新の極秘兵器という設定にまるでリアリティが感じられず、変に新設定を盛り込まないほうが良かったのではと思えてしまった。
しかしこの映画、話のテンポがいいので、「バイオ・スケアード」と違ってあまり退屈さを感じることは無かった。それに本作は照明の使い方が及第点に達しており、前作で頻繁に見られた「暗すぎて何がなにやらさっぱり分からない場面」が殆ど無くなり、シンジェノアの全体像もはっきりと把握できるようになっているのだ。特に後者は「バイオ・スケアード」で欲求不満が溜まっていた分、その喜びもひとしおであった。相変わらずシンジェノア自身の恐怖感に欠け、発狂していく社長の方が遥かに怖かったのは問題だが、モンスター映画としてはまずまずの出来である。

TOP PAGEへ