バイオ・スケアード 悪魔の遺伝子   「評価 D」
遺伝子工学の発達した近未来。とある町では、女性の左足が千切られ首が折られて殺されるという残虐極まりない事件が続発していた。犯人は粘液を除けば証拠らしいものを一切現場に残しておらず、警察も捜査に行き詰まってお手上げ状態。そんな中、元刑事の貧乏作家テッドは、かつて遺伝子研究所で働いていたらしい女性シェリーから驚くべき事実を聞かされる。この一連の事件は全て、研究所から逃げ出したバイオ・モンスター「シンジェノア」の仕業だというのだ。事件によって恋人のジェニファーを失ったテッドはその話を信じ、シェリーと共にシンジェノア退治に乗り出すが…。
遺伝子操作によって誕生したバイオ・モンスター「シンジェノア」が人類を襲うSF映画。シンジェノアは粘液まみれの姿が「エイリアン」の影響を感じさせるが、細かい皺が刻まれた皮膚といいチャーミングなモヒカン頭といい、なかなか秀逸なデザインをしている。しかし「闇に紛れて行動する」という特性のせいで、クライマックスになっても全体像が良く分からなかったのが惜しまれた。そのため映画ではシンジェノア本体よりも、こいつに脳髄を吸われた男の、皮膚が変色し口から粘液を垂れ流している姿の方がインパクトにおいて遥かに勝っていたのだ。
また本作、テンポの悪さも気になった。シンジェノアが下水道から這い出して、近くの家にいた美女を襲う──というモンスター映画の導入部分としては定番とも言えるシーンに7分も費やしたかと思えば、今度はテッドとジェニファーが出会って恋人になるまでの過程をダラダラと20分近くかけて描写したりと、いつまで経ってもストーリーの本筋が見えてこない。そして「主人公vs怪物」という構図が確立するのはなんとラスト30分になってからであり、それまでの間はまるで盛り上がないのである。しかもクライマックスの戦いは演出の不出来のおかげでいまいち緊迫感が湧いてこず、決着の付け方も実に呆気ないもので腰砕け。モンスター映画としては何とも評価しがたい内容の作品だった。

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