合衆国沈没              「評価 D」
フロリダのパハロ島で、海水浴を楽しんでいた男が全身火傷で死亡するという事件が発生した。彼と一緒にいたガールフレンドの証言によると、海底から煙が出ていて急に水が熱くなったらしい。またこれと前後して島では小さな地震が頻繁に発生しており、地震学者のアンソニーは近々島に大地震が訪れることを予感した。そして事件が発生した日の昼時、とうとうパハロ島はマグニチュード8の大地震に見舞われたのである。崩れゆく建物。炎上する化学工場。そんな中でアンソニーは、妻のリンが半壊した建物の中に閉じ込められていることを知り、義父のラーソン保安官と共に救出に乗り出すが…。
「日本沈没」がリメイクされたのに肖って、こんないい加減すぎる邦題を付けられたアメリカ製地震映画。実際に地震が起こるのはフロリダ州の辺鄙な小島だけなのも、沈没すらしないのも十分に予想通りではあるが、やはり誇大広告とのギャップには常ならぬ哀愁のようなものが感じられた。またタイトルロゴやパッケージのデザインが「合衆国壊滅M10.5」や「壊滅暴風圏カテゴリー8」なんかを彷彿とさせるものになっているが、別に美麗なCGによる超絶災害シーンやブッ飛んだ展開が拝めるなんてこともない。この映画、本当にごくごく普通のパニック映画なのである。
さて本作、邦題やパッケージについては配給会社が勝手にしたことなので同情の余地があるにしても、地震映画にしては演出や脚本が尽く緊張感に欠けていたのが致命的だった。車が崖っぷちに飛び出してピンチというお決まりのシーンでは、主人公たちの焦る顔ばかり写すものだから断崖の高さがいまいち伝わってこない。建物からリンを救出しようとする一連の場面は、「救助に向かう→余震発生→建物が崩れる→外へ引き返す」の繰り返しで物凄く鼻につく。そしてクライマックスの化学工場からの脱出シーンは、子ども騙しにすらなっていない御都合主義の百花繚乱で、少しも焦燥感が湧いてこないときたものだ。パニック映画の肝とも言える部分がごっそり抜け落ちていた、非常に侘しい印象の作品だった。

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