ジョーズ'96 虐殺篇 「評価 D」
海洋生物学者のビリーは、恋人のバネッサと一緒に休暇を利用して以前働いていた水族館へとやってきた。ところがここ数年の再開発の影響で、水族館はリゾート会社の社長ルイスによって買収されようとしていたのである。スタッフと協力して馴染みの水族館を守ろうとするビリーだが、ルイスたちは何とかして土地を取り上げようと悪質な妨害工作を重ねていた。そんなある日のこと、近くの砂浜で鮫に襲われたダイバーの死体が打ち上げられた。ビリーは市長に対して砂浜の閉鎖を要求するが、市長は今は町の稼ぎ時だということでまるで聞き入れてはくれなかった。そして数日後、砂浜ではルイス主催のウインド・サーフィン大会が開かれた。優勝者には多額の賞金が振舞われるということなので、水族館のスタッフも勇んで競技に参加する。だがサーフィンのレースが始まった直後、鮫が会場に乱入してきたのである…。
鮫映画のブームが途絶えて久しい95年、突如イタリアより発表されたマカロニ・ジョーズ映画。本作は「サーフィン大会に鮫がやってきて阿鼻叫喚」なんて何処かで見たようなシチュエーションからも明らかなように、鮫の出てくるカットのほぼ全てを「最後のジョーズ」から流用しているという、コーマンの「ジュラシック・シティ」みたいなウルトラC的手法で製作された低コスト映画である。そのため主要な登場人物と鮫が一緒に映るカットは勿論無いし、同時に鮫の迫力に乏しいという「最後のジョーズ」の欠点がまんま引き継がれている。いや、それどころか「最後のジョーズ」における唯一の見所だった「鮫がヘリにぶら下がったオヤジを食いちぎり、更にヘリにヘッドバットを食らわせて墜落させる」という一連のカットが、「鮫と登場人物を一緒に映せない」制約のおかげで丸ごと省略されていたため、見所の無さでは「最後のジョーズ」以上と言ってもいいだろう。そこでその分を補おうとしたのか、本作では「最後のジョーズ」から頂戴した各カットの繋ぎ方に工夫が施されていた。例えばサーフィン大会のシーンでは、「最後のジョーズ」のマイク死亡カットを挿入してサーファーが鮫に食い殺されているように見せてあったり、その直後に「最後のジョーズ」のクライマックスにあった桟橋破壊シーンを繋げたり──と「最後のジョーズ」のハイライトシーンの凝縮化を図っていたのである。これによって作品も多少は盛り上がりを見せていたが、やはりヘリ撃墜シーンにあったスペクタクル感には遠く及ばない。素材こそ同じではあるが、決して「最後のジョーズ」以上のものを期待してはいけない作品である。
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