スペース・サタン 「評価 C」
土星の第三衛星に存在する、巨大な地下基地タイタン。新種の植物の研究栽培が行われていたこの施設ではアダム少佐とアレックスの二人が駐在していたが、そこへメカニック担当としてジェームズと名乗る男が新たに派遣されてきた。初めは彼を歓迎する二人だったが、このジェームズという男、ひたすらに情緒不安定で奇行癖が目立った。それもそのはず、彼の正体は精神不安定を理由に任務から外されたベンソンという男で、同僚のジェームズを抹殺して彼に成り代わってタイタンへと来ていたのである。そうは知らずとも二人は彼に対して日に日に距離を置くようになるが、そんなある日のこと、ベンソンはタイタンでの仕事を手伝うためにと、胎児の脳が埋め込まれたアンドロイド「へクター」を完成させた。ジェームズの後頭部に差し込まれたプラグからテレパシーを送信することで動かされるヘクターは、完成したばかりの頃はジェームズの命令に忠実に従っていた。しかし彼がアレックスに対して抱いている邪な考えまで感じ取ったヘクターは、アレックスへの愛に目覚めて暴走を始めたのである…。
「スター・ウォーズ」の美術スタッフであるジョン・バリーが立ち上げた企画をもとに、「雨に唄えば」「恋愛準決勝戦」などのMGMミュージカルで知られるスタンリー・ドーネンが製作したSF映画。80年という製作年度もあってか「エイリアン」の影響をモロに受けたような内容で、タイタン内部のセットは殆ど「エイリアン」のそれと同じ。それでいてアクションに不向きな人間が撮っているためにヘクターとの戦いでは演出やカメラワークに切れ味が感じられないので、どうにも劣化版「エイリアン」という印象が強く残る作品だった。
この映画の見所は、冒頭の宇宙空母ジュピター内部の大掛かりなセットである。据え置きの電球が左右にずらりと並んでいる通路、天井と床の両方でクルーたちが歩き回っている巨大な廊下と、今にもクルーたちが踊り出しそうなほどの幻想的な光景が広がっている。タイタン内部と違ってこちらは製作者の独自色が強く出されており、SF的道具付けとMGMミュージカル的セットがしっかり融合しているという点からも、非常に興味深く見ることができた。
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