1200℃ ファイヤー・ストーム       「評価 D」
やり手の女検事サビーネは、このたびイタリア北部で発生したトンネル火災についての裁判を担当することとなった。被告はトラック運転手のジコースキー。彼がトンネル内で衝突事故を引き起こし、それで発生した火が積荷に引火して大火災となったのである。ジコースキーに過失があるのは明らかだったので、サビーネも初めは彼のみに対して責任を追及しようとしていた。ところが事件を調べていくうちに、彼が様々な権力者たちのスケープゴートとして使われているに過ぎないことが明らかになっていく…。
邦題やDVDのパッケージがまるでパニック映画のような佇まいをしている本作だが、実際はある事件を機に巨大権力と闘うこととなった女検事の活躍を描く社会派ドラマである。現場に居合わせた様々な人間の回想という形でトンネル火災の様子を綴っていき、各人物が見てきたものがリンクすることによって徐々に事件の真相が浮き彫りにされるという構成は、ありがちながらも悪くない。しかし大まかな事実が明らかにされて「ならば誰に責任があるのか?」という段階へ移行した途端、ストーリーがいっぺんに胡散臭いものになってしまった。サビーネは「事件に関わっている権力者全員から賠償金を勝ち取ってやる」とでも言わんばかりの勢いで責任追及の矛先をあらゆる権力者に向けるようになるし、トンネル火災の回想話の方も真相に近づくというよりも単なる悲劇といった色合いが強くなっていく。それまで権力者の関与を匂わせているのが登場人物の証言ぐらいしか無かったものだから、ここに来て何のためらいも無しに権力者との闘いに突入するサビーネにはどうも煮え切らないものが感じられ、その後に感情誘導的な回想話を見せられても冷めた印象しか残らないのである。そしていよいよ権力者との闘いに突入するクライマックスも実に呆気なく片付けられており、何とも味気ない。検事を主人公に据えた意味を製作者に問いただしたくなるような作品だった。

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