三頭魔王 「評価 C」
親孝行な少年・小明は、病弱の母親に元気になってもらおうと、毎日のように山を歩き回っては薬草を集めていた。小明はある日、毒蛇に噛まれて死に掛かっていたところを、伝説の妖精・千年人参王によって助けられた。千年人参王の体には不老不死の魔力が宿されており、一度その体を食べれば、生きた者は不老不死に、死んだ者には新しい命が手に入ると言われていた。それ故に彼を狙って山を訪れる悪党は後を絶たず、その日も小明と別れたばかりの千年人参王のもとへ、極悪非道な三頭魔王の一味が襲撃をかけてきた。何とか逃げ延びる千年人参王だったが、その際に彼の体の一部が地面に落ち、墓場に眠っていたナチス・ドイツの男を吸血ゾンビとして蘇らせたのである。吸血ゾンビは小明の家を襲い、病弱の母親を無残にも抹殺。事態に気づいた千年人参王の手によってゾンビは始末されたものの、その直後、再び現れた三頭魔王一味の手によって千年人参王はさらわれてしまった。母親を生き返らせるには、千年人参王の力を借りるしかない。そこで小明は、千年人参王を助けるために三頭魔王の住む魔の山へと旅立ったのである。途中、親切な山の神様や、何でも知っている目巨人と耳巨人、どんな山も一跨ぎで越えてしまう足長の七などに助けられ、無事魔の山に辿り着く小明。だがそこでは、三頭魔王による千年人参王を食べる儀式が着々と進行していたのである…。
神聖な人参を巡る善と悪の壮絶な戦いを描いた、香港製医食同源ファンタジーロマン超大作(嘘)。等身大の人参や石の巨人など、様々な妖精や魔物が出てきて画面を賑わせてくれるのだが、肝心のタイトルにもなっている三頭魔王がナヨナヨな造形のおかげでいまいち迫力に欠けるのが辛い。戦う手段が人型でありながらエフェクトによる光線主体なのも、モンスター好きとしては欲求不満が募るところだ(おまけに光線は、青い絵の具を画面にぶちまけたようなすごい特殊効果で表現される)。
またストーリーは脱力そのもので、いきなり出てくる地雷原や、死んだ母親を床に置きっぱなしにして旅に出る小明など、ギャグなのか天然なのか分からない笑い所に溢れているのが壮絶。そしてクライマックスの戦いになるとヘナヘナさ加減は頂点に達し、ここでは三頭魔王を倒せる唯一の武器である寒氷剣というものが出てくるのだが、この寒氷剣、暗闇の中では刀身が青白い光を放っており、どう見てもライトセイバー。一方の三頭魔王も怪光線を放って応戦するが、光線を放つ音がどう聞いてもスターウォーズで使われている光線銃の効果音と全く同じ。おまけに寒氷剣を振り回す婆さんはスターウォーズの皇帝よろしく黒マントを頭から被っていたりと、どこまでもSWリスペクトに溢れた戦いが展開されるのである。味方の女戦士のアクションとかは香港映画らしく切れ味のよいものになっているものだから、このクライマックスでのSFXを駆使した戦いぶりがひとしお腰砕けに感じられた。
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