ザ・スタッフ                「評価 C」
採掘場で働いていた中年男性はある晩、地中深くから湧き出ているメレンゲのような物を発見した。試しに舐めてみたところ、これが大変甘かったので、男はこれにスタッフと名付けて商品化。とても美味しくてローカロリーなスタッフは、アイスクリームに代わるデザートとして飛ぶように売れ、たちまち男を大富豪へと伸し上げたのである。一方、それが面白くないのはアイスクリーム業界。彼らは何としてでもスタッフの製法を知りたいと考え、元FBIの産業スパイであるデビッドに調査を依頼した。かくしてデビッドは、お菓子広告業界の元花形チョコチップ・チャーリーや宣伝業者のニコール、それとスタッフを執拗に嫌っている少年ジェイソンと協力し、スタッフの秘密を探ろうと動き出した。だが調べを進めていくうちに、スタッフは大量摂取した者を意のままに操ってしまうアメーバ状の生物だったということが明らかになったのである。スタッフに操られる人の数は増加の一途をたどり、一部の町では半ゾンビ化した人々が平然とうろつくようになってしまった。そこでデビッドは人類を滅亡の危機から救うべく、得意の話術で軍隊をそそのかしてスタッフの壊滅に乗り出した…。
「悪魔の赤ちゃん」のラリー・コーエンによる、ブロブタイプのモンスター「スタッフ」が猛威を振るうホラー・コメディ映画。前半ではモンスターが人間を襲うのではなく、人間たちの方から知らず知らずの内にモンスターを取り込んでいくという逆転の構図が冴え渡っており、スタッフの正体が明らかになってからは、ソフトクリームと木工ボンドの中間をいく質感のスタッフが地面を這ったり飛び散ったりする際の、絶妙な特殊効果が見所となっている。また映画の後半では、米軍大佐が共産圏の陰謀と言うだけで何でも言うことを聞いてしまったり、全身武装した軍人たちが勇壮なマーチと共に市街地をタクシーで移動していたりと、軍隊を茶化したギャグがなかなか良い味出していたのも忘れがたい魅力だ。
しかし本作、脚本の窮屈さが何かと気にかかった。色々な要素を好き放題盛り込んだら羽を伸ばす余裕が無くなったとでも言うべきか、チョコチップ・チャーリーの落ちぶれやジェイソンの家族、ゾンビ軍団の末路など、台詞による説明で片付けるには惜しい箇所があまりにも多いのである。そのせいかラストのオチもいまいちパッとせず、「ああ、やっぱりこれはラリー・コーエンの作品なのか」と思わずにはいられなかった。

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