スナッフ 「評価 D」
退廃的な若者たちが増殖した70年代。南米ブエノスアイレスでは、サタンと名乗る青年が数人の女を従え、ハッパをきめたり情欲に耽ったりと好き放題のことをしていた。ある時サタンは自分の魂を浄化させるためには生贄が必要だと告げ、部下の女たちに人を殺してくるように指示する。カーニバルの会場で、郊外の商店で、平和に暮らしていた人々を次々と殺害していく女たち。そしてサタンが前々から敵視していた武器商人の家へと女たちが殴り込みをかけた時、何処からか「カット!」の声が飛んできた。そう、これは映画の撮影だったのだ。監督はおもむろに立ち上がると、出演者らしい女性に「いい演技だったぞ」と告げ、ベッドに押し倒した。このまま性交に入るかと思いきや、興奮した監督は近くに落ちていたナイフやペンチを拾い上げ、女の体をバラバラにしていったのである…。
76年の公開当時に「殺人現場を写したフィルムを発見!」などと大々的に売り出され、日本でも瞬間的に大きな話題を呼んだホラー映画。だがその実体は、シャロン・テート事件を元ネタにした低予算ホラー映画に例の「監督による女優殺害映像」をつなぎ合わせただけの内容で、しかもラストで殺害される女優はそれまでの映画に全く出演しておらず明らかに別撮りされたものだったという、全くもってお粗末なことこの上ない作品であった。それでも公開当時はラストの殺害シーンを見て「スゲー」と驚いてしまったのだから、宣伝の力とはかくも恐ろしいものである(スタッフ・クレジットやエンドタイトルが一切出てこないのも、本物っぽさを強調してはいたが)。
さて本作、わざわざ別撮りされた殺害映像をくっつけて上映されるだけのことはあり、前半のホラー映画部分は退屈そのもの。怒鳴りたてる人物の顔がクローズアップされるなどの大袈裟な演出が鼻につくし、殺害シーンも淡白で嫌らしさに欠ける。だがそんな中で唯一光っていたのが、サタンの下僕アンジェリカの回想シーンだ。父親に犯されて農園主に犯されてその現場を弟に見られたかと思えば、農園主が父親を殺して切断した両手首を紐で吊るして、怒った弟と農園主が対決して──といったドロドロの展開が数分程度のうちに猛スピードで繰り広げられ、その目まぐるしさには爆笑必至。他のシーンがやたらとダラダラしていた分、ここの超特急ぶりが一層印象深く感じられたのである。(それにしても、本作の前半部分に出てきた映画監督が巨乳ポルノ専門だという話にはびっくりした。よくモデルのロマン・ポランスキーに怒られなかったものだ)
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