黒い蠍                 「評価 C」
メキシコで発生した大規模な火山噴火は、一部の地域を完全に孤立させてしまうほどの夥しい被害をもたらした。そこで地質学者のスコットとラモスは、被害の状況を調べるために山間の村サンロレンゾへと向かった。だが二人は村に行く途中、ペシャンコになったパトカーと警官の死体を発見する。また到着した村でも住民の相次ぐ変死という異常事態が起こっており、二人は牧場経営者の娘テレサと協力して、これらの原因を調査することにした。そして明らかになったのは、地底深くに生き延びていた古生代の巨大サソリが、この度の噴火によって地上に蘇ってきていたという驚くべき事実だった。血に飢えた巨大サソリはやがて村を襲撃するようになり、事態を憂慮した軍はサソリたちの棲家である地下トンネルを爆破。かくして丸く収まったかに思えたが、それからしばらくして、爆破を逃れていたサソリたちが地表に這い出し、メキシコシティへと接近しつつあることが明らかになった…。
ストップ・モーション・アニメの祖、ウィリス・H・オブライエン。25年の「ロスト・ワールド」、33年の「キング・コング」などで魅力溢れるモンスターたちを動かし続けてきた彼が、晩年の57年に携わったのがこの映画である。主役の巨大サソリは目のフチの部分が左右つながっていて、何処となく赤塚不二夫の漫画に出てくるお巡りさんを想起させるような顔をしているのが印象深い。さてこの巨大サソリ、クライマックスの乱戦で迫り来る戦車を軽々と持ち上げてしまう怪力を見せ付けてくれたりするものの、一方で低予算ということもあってかサソリたちが出演するシーンは同じカットの使い回しや合成の稚拙さ(サソリが透けて後ろの風景が見えるカットがチラホラ)が目立ち、これ単独の怪獣としての魅力はさほど感じられなかった。ただ本作ではその不足分を補うかのごとく、中盤の地底トンネルの場面で巨大蜘蛛や巨大尺取り虫(何故かハサミと小さい足まで付いているが、一応尺取り虫らしい)が登場して場を盛り上げてくれる。彼らが巨大サソリやスコットたちと異種生物間バトルロイヤルを繰り広げる様は、ハサミで相手を掴んで引っくり返すといった巨大生物たちのダイナミックな動きも相俟ってモンスター映画好きならば興奮すること請け合い。この地底トンネルの戦いだけでも、本作を観る価値は十分にあると言ってもいいだろう。

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