TSUNAMI                「評価 D」
ドイツ沿岸の島・ジルト。ここでサーフショップを営んでいたジョンは、事故で恋人を死なせてからというもの自暴自棄な生活を送っていた。おまけに追い討ちをかけるかのように、北海のガス田で働いていた親友のクリスチャンが、島への帰省中に殺害されるという悲しい事件が発生する。その上、島を謎の津波が襲い、家族までもが怪我を負ってしまう始末。度重なる不幸に、失意の底に沈むジョン。だがクリスチャンがガス田で行われている強引な採掘手段に異を唱え続けていたことを知ったジョンは、彼を殺したのはガス会社の人間ではないかと推理した。そこで偶然知り合った環境局のスヴェンニャと共に、ジョンは問題のガス田へと向かう。ところがそこでは現場監督のクレムリックが、ガス層に爆弾を仕掛けることで本社から大金を脅しとろうとしていたのである…。
「ポセイドン」を意識したパッケージが目を引く、ドイツ製の津波映画。ドイツが作った津波映画といったらイマイチ感の強かった「大津波」が真っ先に思い浮かぶが、本作もあの映画と同等のかなりイマイチ感漂う出来だった。何せ本作、脚本が支離滅裂な上に演出も無茶苦茶。どうぞ突っ込んでくださいと言わんばかりの凄まじい内容なのである。
一番酷かったのは、悪役クレムリックの行動の突拍子の無さだ。上司との話の都合を合わせるためにわざわざ島まで行ってクリスチャンを殺したり、自分の背信行為が本社にばれると逆ギレして脅迫行為に出たり、挙句に津波が接近しつつある港に来たら真っ先に津波に飲み込まれそうな船の中に隠れたりと、やることなすこと全てがイカれてる。そのくせ手負いの部下に対し楽に死ねるようにと拳銃を渡す場面ではやたらと感動を煽る演出がなされているものだから、そのミスマッチさには笑うしかなかった。
また津波に関しても、海中から津波の様子を捉えたカットや漁船が波に乗る場面などといった小さな描写では奮闘していたものの、島に波が押し寄せる場面や貨物船が津波に乗り上げる場面といった、大掛かりな見せ場に差し掛かると急に演出が貧相になってしまうのが困りどころ。島を波が襲う場面では田舎だからということもあってかろくな破壊描写もされないし、貨物船が高波に乗る場面では、操舵室から映したカットでは甲板に乗せられたコンテナが船の傾きに伴って大きくずれていく様子が描かれているのに、その直後の遠くから見たカットでは甲板のコンテナが全く動いておらず整然と並んでいるなんて演出ミスが起こっている。曲がりなりにもパニック映画なのだから、スペクタクル的な描写にはもっと心を砕いて欲しかったところである。

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