ミステリー・ツアー 「評価 B」
この映画、馬鹿な若者たちが殺されていくという80年代のスプラッター映画をまんま踏襲したプロットらしかった上、DVDのパッケージがあの駄作「悪魔のえじき2」にクリソツだったものだから、観る前はものすごく嫌な予感に苛まれていました。ところが実際に観てみるとあらビックリ、スタイリッシュな演出とコメディ要素との配分も絶妙な隠れた佳作じゃありませんか。いやあ、こういう掘り出し物があるからB級映画鑑賞はやめられない。
中米カリブ海に浮かぶ常夏の楽園プレジャー・アイランド。人気歌手のココナッツ・ピートが運営するこのリゾート地では、例年やってくる多くの若い男女たちによって飲めや歌えやの大乱交パーティーが繰り広げられていた。しかしある日、この島を惨劇が襲った。ブードゥーの仮面にポンチョを纏い、巨大なナタを携えた謎の殺人鬼によって、リゾート施設のスタッフが次々と殺されていったのである。同僚の死体を見つけたスタッフたちは外に助けを呼ぼうとしたものの、既にボートは沖に流され、無線も壊された後だった。完全な密室となった楽園で、ナタ殺人鬼は次なる獲物を求めてさまよい歩く…。
本作において最も特筆されるべき点は、ホラーコメディでありながら殺害場面の出来が驚くほど秀逸なところだ。冒頭の首切りシーンでは、切断された首が地面に転がり、やがて胴体も倒れる──といったよくある一連の流れを全て殺害される人間の視点から映し、「目の前で自分の胴体が痙攣している」という異常な状態を見せつけている。また迷路での殺害シーンでは、被害者が死亡した直後にカメラが迷路を俯瞰するアングルへと変わり、壁一枚隔てたところで男女が楽しく遊んでいるのを映して、日常の脆さを抉り出している。そう、本作は色んな映画で使い古されてきた様々な殺害の手口を、見せ方を変えることによって格別にぞっとするものへと仕立て直しているのだ。コメディ映画のため真犯人の動機や伏線回収の仕方なんかはテキトー極まりないのだが、演出のキレに関しては並のホラー映画を遥かに凌いでいた作品だ(しかしクライマックスになるにつれて演出の切れ味が鈍くなっていき、ラスト付近では完全なギャグ映画と化してしまったのは残念)。
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