悪魔のかつら屋            「評価 D」
エルム通りの117番地では、老婆プリングルが知恵遅れの息子ロドニーと一緒にかつら屋を営んでいた。彼女の店で作られるかつらは本物の髪の毛のような見事な出来で、たちまちオシャレに余念が無い女学生たちの間で話題の的となったのである。ところが、この店のかつらには大きな秘密があった。店を訪れた女性を作業部屋まで誘い込み、その頭皮を剥いでかつらにしていたのだ。そしてある日、この店に立ち寄ったのを最後に消息を絶った友人を追って、女学生のキャシーが店を訪れた…。
冒頭のカツラ同士の会話から、犯人母子のホームドラマのようなやりとり、至る所で流れる軽快なBGMなど、隅から隅までユーモラスな要素にまみれたH.G.ルイス製作のスプラッター映画。主人公のキャシーは想像力豊かで行動的な女の子で、殺人事件のニュースを聞くや否や真っ先に食いつき、独自に事件を調べようと決心する。ところが映画の中で彼女がしていることと言ったら、女子寮で世間話をしたりボーイフレンドのデイヴと一緒に映画を観たり海に行ったりで、映画の終わりの頃になるまで一向に犯人母子と接触する気配が無い。一方で事件に全く興味を持っていなかった彼女の友人たちは次々と事件に巻き込まれていくわけで、この錯綜した構図には何ともいえない面白さが感じられた。
しかしこの映画、殺人のシチュエーションがどれもこれも一緒な上、キャシーが怪しい男を追跡する箇所など無意味な場面で時間を稼いでいるきらいがあり、内容自体は正直言って退屈である。時折不安定なカメラアングルや殺害シーンにおける嫌らしいまでの長回しなどで観る者の不安を煽りはするが、それもすぐに脳天気な日常を送るキャシーの姿によって掻き消されてしまう。スプラッター映画としてはどうしてもイマイチ感の拭えない作品だった。

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