血の祝祭日             「評価 B」
閑静な街の一角でひっそりと営業されている、フアド・ラムゼスのエスニック料理販売店。ある日この店を訪れた主婦ドロシーは、店主のラムゼスに対し、近いうちに開かれる娘スゼットのパーティーに出すための特別な料理が欲しいと注文した。するとラムゼスは彼女の話を快く引き受け、当日は彼女の家に直接赴き、素晴らしいエジプト料理をお届けすると約束したのである。一方それに前後して、街では女性ばかりを狙った連続猟奇殺人事件が発生していた。被害者は全員体の一部を抜き取られた無残な殺され方をしており、スゼットのボーイフレンドで警官のピートは懸命に犯人を追うものの、なかなか手掛かりは掴めない。そうこうしている内にも事件の真犯人・ラムゼスはせっせと殺人を繰り返し、女性の体のパーツを集めていた。全ては自らが信奉する暗黒の女神・イシュタルを復活させる「血の晩餐」を行うために…。
鮮血や内臓の描写に溢れ、当時の観客の度肝を抜いたH.G.ルイス製の元祖スプラッター映画がこれだ。ナイフにこびりついているゼラチン状の肉片、脳味噌を抜き取られた惨殺体といった視覚的残虐表現の数々は、それだけを取って見ると今となっては随分と古臭く感じてしまう。だが逆に、この古めかしさが本作の魅力とも言えるのだ。本作は63年製作であるが故、全編にわたってクラシカルな雰囲気が見受けられる。登場人物たちが身に纏うカラフルな原色の衣装。ピートとスゼットのキスシーンで流れる甘い音楽。そしてラストショットで血の涙を流しているイシュタル像──。これらの要素が件の凄惨シーンと合わさることにより、「古典的なサイコホラーの世界で内臓が飛び出す」という、実にぞっとする光景が展開されるのである。ラムゼスがあまりにも間抜けな最期を遂げる他、事件解決後にピートがそれまでの捜査の流れを改めて解説したりと、締めの段階になって作品の調子が突然崩れたのは「2000人の狂人」と同様に気になったが、作品自体は元祖の名に恥じない秀作である。

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