2000人の狂人(別題:マニアック2000) 「評価 A」
「プレザント・バレーに暮らす皆さん、今日は何があるか知っていますか? そう、この町の誕生百周年記念祭です。ここプレザント・バレーが誕生したのは、南北戦争の終わった1895年。私たちの町の歴史は、同時に我々南部人の屈辱の歴史と言えます。ですから今日の祭りには北部から来たヤンキーの方々を主賓に招き、彼らに楽しんでもらえるよう精一杯努力することに致しましょう。しかし皆さんも御存知の通り、この町は色々と事情がありまして滅多に余所の人間が訪れることはありません。そのため我々は、前もって町の近くの道路202号線を封鎖しておきました。あの道路はフロリダやアトランタにも通じていますから、きっとたくさんのヤンキーが立ち往生した挙句、この町へ来てくださるに違いありません。…おや、そうこうしている間にヤンキーども六人の乗った車が町のメインストリートへとやってきました。さあ、百年祭の始まりです。市長バックマンを始めとする住民2000人一同、町の旗を振って彼らを出迎えましょう。子供たちは歌を歌って彼らを喜ばせてください。ヤンキーの皆さんは祭りの主賓なのですから。彼らの生涯の思い出となるよう、我々は様々なイベントを企画致しました。まずは今夜開かれるバーベキュー大会。ヤンキーには現地調達した新鮮な肉に舌鼓を打ってもらいましょう。それが終わったら興奮必至の競馬大会です。我が町自慢の馬によるパワー溢れる走りっぷりには、北部のヤンキーも叫び声をあげての大はしゃぎをしていただけることでしょう。これらの他にも樽回しやグラグラ岩、それに斧投げ大会と、様々なイベントが催される予定となっております。ヤンキーの方々に楽しんでいただくためにも、町人一丸となって誠心誠意のおもてなしを致しましょう」
ハリウッドにおけるスプラッター・ホラーの祖、ハーシェル・ゴードン・ルイスによる南北戦争終戦百周年記念映画。ワケあり南部人2000人による北部人6人への集団リンチを描いた内容で、町を訪れたヤンキーたちをにこやかに出迎えた時のテンションそのまんまにヤンキーどもを殺しにかかる住民たちのクレイジーさが作品の肝だ。プレザント・バレーの住民たちは、常に笑顔を絶やさない。女性の肢体をナイフや斧で解体してはゲラゲラ大笑い。男を馬裂きの刑にかけてはカントリーを演奏して大喜び。この「殺人が当たり前のように行われている」非日常さ加減が時折流れる階調の狂ったオルガン音楽と相俟って、素晴らしいまでに不安な感情を煽り立ててくれるのである。
またあくまで祭りのイベントとして北部のヤンキーたちを殺すため、殺す手口がいちいちアミューズメント性に富んでいるのも本作の魅力。「樽転がし」は丘から北部人の入った樽をゴロゴロ転がすだけのイベントなのだが、樽には外から無数の釘が打ちつけられており、丘の下まで転がり終わった頃には血まみれの惨殺体に早変わり。「グラグラ岩」は巨大な岩を乗せた櫓の下に北部人を寝かせ、岩を固定している丸い的めがけてみんなでボールを投げていくというイベント。ボールが的に命中すると岩が落下し、たちまち北部人はペシャンコになるという仕組みだ。こんな風に殺しがあくまで余興の一環なのも、本作における狂気ムードを倍加させていた。ラストが些か冗長すぎるのは気になったが、「ザ・チャイルド」などの集団vs.少数の恐怖を描いた映画が好きな人ならば必見の傑作である。
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