アラブ女地獄 悪魔のハーレム           「評価 C」
アメリカ人のエージェント、スコットに与えられた新たな任務。それはアラビアの小国に渡り、悪党ハキムを始末せよというものだった。正統な為政者である王子がまだ幼いのをいいことに、ハキムは彼を地下牢に幽閉して国の実権を掌握した。そして方々から誘拐してきた女性を側近のイルサに調教させ、性奴隷として各国の富豪に売りさばいていたのである。アラビアに到着したスコットは怪しまれないようにハキムに接近し、イルサの凄惨な調教ショーに顔色を悪くしながら王子を助け出すチャンスを探る。ところが勘の鋭いハキムは彼の目論見に気づき、スコットは監禁の後に処刑されることとなった。あわや絶体絶命のスコット。だがそこへ意外な助っ人が現れ、事態は急変する。ここしばらくの生活でスコットを愛してしまったイルサが、彼の救出に駆けつけてくれたのである…。
ダイアン・ソーン扮するイルサがまたしても拷問ショーを繰り広げる、「ナチ女収容所 悪魔の生体実験」の正当な続編。今回はあくまで調教が目的なので前作に比べるとグロテスクな場面は若干少なめになっているが、それでも邪魔者を処刑するシーンでは乳房を万力で締め付けたり、毒サソリのいる檻の中へ頭を突っ込んだりと容赦のない責め苦が続くので痛々しいことには何ら変わりなかった。
この映画で少々気になったのは、イルサのポジションだ。シリーズを通してイルサという女性は自分の欲求を満たすためなら神をも恐れない存在として描かれているものの、本作のイルサはシリーズの他の作品と違って、自ら組織を束ねているわけではない。あくまでハキムを首領とした、人身売買組織の一員として活動しているのである。そのためスコットを助けた彼女は悪の組織の裏切り者であり、また映画の前半で女奴隷たちに散々酷い仕打ちを加えたので主人公サイドからも歓迎されることがない。本作の後半部分において、イルサは完全に孤立した立場の人間として扱われているのだ。本作のラストも他のシリーズ同様、今までの悪行の報いを受けるイルサの姿が描かれるのだが、この「孤立してまで主人公への愛を貫いた」という点が妙に引っ掛かり、何とも後味の悪い終わり方となっていた(まあ、単に極悪人が珍しく善いことをしたから印象に残っただけかもしれないが)。

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