悪魔のえじき ブルータル・デビル・プロジェクト 「評価 A」
ヨットが航行不能になり、海上を漂流していたロンたち三人。やがて水平線の果てに孤島を見つけ、ようやく救われたのだと安堵した。ところが上陸するや否やブリキの仮面を被った謎の軍団が現れ、彼らを取り囲んだ。この島では狂人マイスター率いる残忍な殺人組織が日々修練に励んでおり、島に侵入した者は容赦なく処刑される運命にあったのだ。捕らえられたロンたちは組織の反逆者レオンと一緒に野に放たれ、彼らの「狩り」の対象とされてしまった。次々と襲い来る組織の連中に、ただ逃げ回るだけのロンたち。だが一方で、前々から組織の壊滅を目論んでいたレオンはこれを機と見て同志を集め、反撃に乗り出した…。
ドイツが生んだZ級スプラッターメーカー、アンドレアス・シュナッス監督による「VIOLENT SHIT」シリーズの三作目。日本では「ブレア・ウィッチ」モドキの映画として売り出されたが、そもそも本作はドキュメントタッチですらないので、日本の配給会社が勝手に付けた冒頭のテロップ「1999年7月、三人の男たちが孤島に上陸したまま行方不明になった。その後、孤島の様子を撮影したフィルムが漂流しているのが見つかった──(以下略)」が異様に空しく感じられたのは私だけでないはずだ。
さて本作、カットごとに画質がぼやけたり鮮明だったりとはっきりしない他、最初はロンたち三人が主人公のような扱いを受けておきながら、中盤からレオンの方が主人公的存在になっていくという滅茶苦茶な脚本、そしてオモチャの人形を下手糞なコマ録り撮影で無理矢理動かしているモンスターなど、映画としての欠点は探せば幾らでも出てくる。むしろ欠点の無いシーンを探すほうが難しいくらいだ。しかしだからと言って、この映画を駄作として切って捨てるのはあまりに惜しい。と言うのもこの映画、欠陥が生じるのをこれっぽっちも恐れていない、凶悪なまでに強烈な悪ノリパワーに満ち満ちているのだ。
本作において、首のねじ切れた男がショックで周囲を走り回るなんてのは当たり前。尻にフックをかけて直腸を引きずり出すわ、単なるキックやパンチが胴体を貫通するわ、頭を縦に裂かれた男が両手で割れた頭を直そうとするわ、神をも恐れぬ破滅的ゴアシーンの乱れ撃ち。更に作品の後半には「黒い悪魔部隊」と呼ばれているニンジャ軍団まで登場し、アジアンテイストの音楽をバックに蛇拳や剣戟の応戦が行われるときたものだ。このアジアン対決シーン自体は役者のスローな動きのおかげでいまいち迫力は感じられなかったが、飛び掛ってくるニンジャに対して剣をかざしてニンジャの体を縦に真っ二つにしたり、剣が刺さったニンジャの首がブンブン飛んでいって他のニンジャの体に突き刺さったりと相変わらずのスプラッターぶりが炸裂し、数あるニンジャ映画の中でも屈指の残虐バトルが繰り広げられていた。
おまけに本作のサービス精神はこれだけに留まらず、クライマックスの決戦には空飛ぶギロチンの使い手とホッケーマスクを被った某有名殺人鬼モドキまで御出演するという大盤振る舞いだ。ニンジャ軍団との対決シーンで既にお腹一杯だったのに、そのうえ空飛ぶギロチンまで出されては、もう感激のあまり涙を流すしかない。まさしく本作、「悪趣味も極めれば傑作になる」の良い見本であった。

ニンジャ映画一覧へ
TOP PAGEへ