アイスクイーン                 「評価 C」
平均体温は零下六十℃、触れた物は何でも凍らせてしまう脅威の生物・アイスクイーン。その回収に成功した生物学者のゴダード博士は、セスナ機を使って彼女を自分の研究室まで輸送しようとした。ところが山脈の上空を飛んでいた時、アイスクイーンは突如暴れ出してパイロットの体を凍らせてしまう。セスナ機はちょうど真下にあったスキー場「キリントン・リゾート」のゲレンデに墜落し、その衝撃でスキー場は大きな雪崩に襲われた。ロッジは押し寄せてきた雪の下敷きとなり、中にいた従業員のジョニーたちは互いに力を合わせて脱出しようとする。ところがロッジの中には、墜落の衝撃に耐え抜いたゴダード博士とアイスクイーンも迷い込んでいた…。
雪崩モノにモンスターパニックの要素を取り入れた、アルバトロス・コア発の極寒スプラッタームービー。「雪に埋もれたロッジからの脱出」というシチュエーションが「ホワイト・インフェルノ」とよく似ているが、雪崩映画として観た場合、本作の方が数段落ちる出来だと言わざるを得ない。問題は大きな雪崩が発生する一連のシーンにあり、ゲレンデを猛スピードで滑り降りてくるセスナ機や、倒壊・爆発する鉄塔、雪に押し流されていく車など、本来ならば大きな目玉となるはずのカットが、稚拙なCGのおかげで緊張感の欠片もない代物になっていたのだ。
しかしこの映画には、それを十二分に補えるだけのアイスクイーンの魅力があった。アイスクイーンは眠らされている間は人間の女性と変わらない外見をしているが、一度目を覚ますと蒼い皮膚に紅い眼をした世にも恐ろしい容貌の怪物へと変身する。この状態になると爪で引き裂いたり触った相手を凍らせたりと、冷酷極まりない凶暴性を発揮するようになるのだが、トイレの温風器を当てられて身動きがとれなくなったり、アイスクリームを美味しそうに貪ったり、あまつさえジョニーの誘いに身をクネクネさせたりと、時折見せるお茶目な一面が実によい味わいを出しているのである。特にロッジの一室でゴダード博士と一緒に喜びの雄叫びをあげるシーンは、この映画の真骨頂と言っても過言ではあるまい。おまけにエンディングのスタッフロールまでもがアイスクイーンの顔をバックに流れる始末で、とにかくアイスクイーンの魅力を感じずにはいられない作品だった。
(また本作、犬好きにはスキー場のオーナーであるエドの飼い犬・アパッチの存在も見逃せないだろう。雪崩が発生したことによる失意のあまり、エドが禁酒中であるにも関わらず酒に手を伸ばそうとすると、アパッチは鳴き声をあげて彼を諌め励ましてくれるのだ。まことに素晴らしい忠犬ぶりで、本作における最大の名脇役と言えた)

雪崩映画一覧へ
TOP PAGEへ