大アマゾンの半魚人 「評価 B」
アマゾンで肺魚類の研究をしていたリード博士は、発掘調査にやってきたかつての恩師・マイア博士と再会する。マイア博士は水かきの付いた人間そっくりの腕の化石を発掘しており、それに興味を抱いたリードは彼らの調査に同行することに。やがて一行は「ブラックラグーン」と呼ばれる人跡未踏の奥地へと足を踏み入れることになるが、そこには人知れず進化を遂げた半魚人が住んでいた…。
ユニバーサル社が生んだ名モンスター、半魚人のスクリーン・デビュー作。地球の誕生から生物の進化までを語る冒頭のナレーションが作品全体に物々しい雰囲気を与えているものの、ストーリー自体は半魚人の生け捕りに拘る人間が出てきたり、半魚人がマイア博士の娘・ケイに熱を上げたりと、極めて定番に沿ったものであり、半魚人が倒されると即座にエンドクレジットが出てきて余韻もへったくれも無い感じなのも含め、あまり褒められたものではない。
しかし作品の顔である半魚人だけは別格で、演出やスーツアクトといったあらゆる点において製作側の只ならぬ入れ込みが感じられた。例えば半魚人はなかなか全身を現さず、序盤のうちは水かきのある手しか映らない。これだけなら怪物映画のセオリー通りだが、本作では最初の発掘シーンで予め半魚人の手の化石を出している故に、その手の特異性がより際立って感じられ、全身像への想像を見事に掻き立ててくれるのである。しかも中盤、半魚人は全身を現すや否やスピーディーに水中を泳ぎ回る姿を披露してくれて、あっと言う間に見る者を虜にしてしまう。泳ぐだけでいっぱいいっぱいな感じだった「吸血怪獣ヒルゴンの襲撃」のヒルゴンと違って抵抗を減らしたシャープなデザインをしており、尚且つスーツアクターのR.ブラウニングが素潜りの記録保持者だったからこそ実現できた名シーンであり(尤もヒルゴンの懸命に泳ぐ姿も個人的には好きだが)、ある意味「最初は体の一部分をチラリと見せ、重要な場面でやっと全身像を見せる」というパターンの完成形の一つとも言える素晴らしい演出だった。
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