金星人地球を征服 「評価 C」
科学者のトムはある日、念願の地球外生命体との交信に成功した。交信の相手は金星人。彼らは金星の未発達な気候が体に合わないために今にも絶滅しそうな現状で、明らかに新天地を探している感じだった。しかし宇宙人とのファーストコンタクトに舞い上がっていたトムは、そんなことを全く気にしない。それどころか彼らが進んだ科学力を持っていることを知ると、「彼らこそ地球の救世主になってくれるに違いない」と思い込み、あろう事か彼らの一人を地球に呼び寄せてしまったのである。案の定、金星人は地球に到着するや否や侵略行為を開始した。付近一帯の機械類の機能を停止させた上、コウモリのような洗脳装置を使って町の人々を次々と奴隷に変えていった。この異変に直面し、妻のクレアや友人のポールはトムの行動を諌めるが、それでもトムは金星人を善とする自身の考えを改めようとはしなかった…。
「ディノクロコ」などを製作して21世紀になっても未だ絶好調なことを示してくれた、B級映画界における大御所中の大御所ロジャー・コーマン。そんな彼の代表作の一つがこれだ。映画の出来はともかくとして、通称「金星ガニ」と呼ばれる金星人のデザインは秀逸極まりない。オクラを半分に切ったような角錐状の胴体と、見るからに凶悪そうな顔とが、奇跡のようなバランスによって只ならぬユーモラスさを醸し出しているのだ。おまけに小さい足が無数に生えているのに両手のハサミ以外は全く動かないデザインのため、移動する時は地上をスライドしているようにしか見えないのが不気味かつ可愛らしくてしょうがない。この素晴らしすぎる御姿を拝めるだけでも、本作を観る価値は十分にあると断言できる。
ただ、映画自体はあんまりにもあんまりな出来である。トムの改心を引っ張りすぎたせいでクライマックスが非常にバタバタしたものになっているし、金星人と軍隊が激突するシーンでは銃も構えずに金星人に突っ込んでいき勝手に餌食になる奴がいて、失笑せずにはいられない。新発見に浮き足立ったトムの姿は面白かったが、ストーリーや演出に過度の期待はしない方がいいだろう。
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