発情アニマル(別題:悪魔のえじき)      「評価 C」
女作家ジェニーは次回作の執筆を行うため、ニューヨークから車で三時間のところにある別荘を借りることにした。別荘は美しい森や湖に囲まれており、作品の構想を練るにも良い刺激となってくれる。今度の作品はきっと会心の出来になるはずだった。ところが、そんな彼女を狙う四人の男がいた。近くの町に暮らしていた四人は女に飢えていた。だからある日、ジェニーが一人でいるところを狙って襲撃をかけたのである。犯され、殴られ、蹴られ、心身共にズタズタにされるジェニー。ショックのあまりしばらく立ち直れなかったが、二週間経過した後、彼女は若者たちへ凄惨な復讐を開始した…。
実際に起こった事件を基にしたというバイオレンス映画。ジェニーたち登場人物の掘り下げが殆ど行われないうちに襲撃に突入してしまうので、肝心の暴行シーンが心的盛り上がりに欠け、後半の復讐部分にさほどカタルシスを得られなかったのは残念なところ。しかし彼女が復讐していく様子はなかなか見事に描かれており、中でも風呂場で男根を切断するシーンの出来は秀逸だった。ジェニーと男が一緒に風呂に入り、男のペニスを愛撫するフリをしてナイフで切り取ってしまった。大抵の映画ならここで男が絶叫をあげるものだが、この映画では男は一瞬痛がるだけで、何が起こったのかすぐには気づかない。浴槽が血に染まっていくのを見て、初めて肉棒をチョン切られたことを知るのだ。しかもこの時、男はいきなり叫んだりはせず、まずは「ア……ア……」と絶句する様子から入っていき、それから徐々にテンションをあげていく。だからこそ男があげる悲鳴には、単純な絶叫ホラーでは決して味わえない、壮絶なまでの惨たらしさが感じられるのである。更に言えば、性器を切断したらそれ以上の追い討ちをかけず、リビングに行って安楽椅子に座り、もがき苦しむ男を尻目にのんびりレコードを聴くジェニーの姿もグッド。彼女の怨恨がどれだけ根深いかを強く印象付けてくれる、恐ろしくも素晴らしい場面である。

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