美女のしたたり 猟奇と虐待の殺人マニア 「評価 C」
精神科医のシェリーは、リックら六人の患者をサンフランシスコ郊外へのキャンプに誘った。交流を深めることによって自己の内面を探るのが目的で、患者たちは多少の衝突がありながらもキャンプを楽しんでいた。ところが一晩明けてみると、テントで寝ていた患者の一人・アッシュが喉を切られて殺されていた。犯人が自分たちの中にいるのではないか。患者たちは互いに疑い合い、最早交流どころではなくなっていた。しかしそんな彼らを嘲笑うかのように、真犯人は次々と殺人を実行していった…。
然るビデオブームの頃、大手にばかり儲けさせてなるものかと幾つもの配給会社が次々と名乗りをあげてきた。「パック・イン」や「メドゥーサ」「アイエム」など、出現した配給会社は数知れず。彼らは海外の名作・迷作・珍作・駄作をこぞってビデオ販売し、血みどろの戦いを繰り広げていた。このビデオ戦国時代を生き伸びるためには、一人でも多くのお客にビデオを買ってもらわなければならない。そこで誇大広告以外の何物でもない宣伝が当たり前のようになされるようになり、巷には事実かどうかも分からない、ただ衝撃的なだけのコピーが氾濫するようになった(最近はこの傾向も減ってきた感があるが、未だ一部の配給会社では根強く残っている)。そんなノリが全てだった時代の象徴とも言うべき作品が、この「美女のしたたり」である。
この映画、キャンプに来た若者たちが殺人鬼に襲われるというまんま「13日の金曜日」的なプロットに精神異常者を登場させただけの、実に安直な内容である。ベトナム帰りのリックが抱えるトラウマや、伏線を生かした展開など、部分的には感心させてくれる箇所もあるが、基本的にはそこいらの殺人鬼ホラーと何ら変わりが無い。
ところが徳間は「美女いじめホラー」なんてジャンルを付け、この映画が恰も美女ばかりが殺される内容であるかのような宣伝を行ったのである。宣伝コピーも「4人の美女が──」となっており、紹介文にも女性キャラの名前しか出てこない。でも実際の登場人物は野郎と女性が半々だし、女性がいたぶられるシーンよりも野郎どもがねちっこく殺されるシーンの方が多い。タイトルと紹介文から美女たちが凄惨な目に遭うのを想像し、嫌な気分になること覚悟で観賞を開始して、そして実際の本編にガックリきてしまった人がどれ程いることだろう。素晴らしいまでに羊頭狗肉な作品であった。
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