クロノス 寄生吸血蟲            「評価 B」
16世紀、迫害を逃れてメキシコに渡った錬金術師は永遠の命への鍵「クロノス」を開発した。彼はクロノスの恩恵に与って400年もの間生き続けたが、1937年に事故によって他界。その後クロノスは歴史の闇に埋もれていった。そして現代、メキシコで骨董店を営む老人・グリスは、売り物の天使像の中から金色の奇妙な彫刻品を見つける。それに触れてみたところ、突然針が飛び出してグリスの手に突き刺さった。慌てて引き剥がすグリスだったが、次の日彼は見違えるように若返っていた。そう、この彫刻品こそがクロノスだったのである。活力を取り戻し、充実した生活を送るグリス。クロノスを奪い取ろうとする連中によって一度は抹殺されるが、それでもクロノスの力は途絶えることがなく、グリスはボロボロの体で息を吹き返し、家へと帰ってきた…。
「ミミック」の監督、ギジェルモ・デル・トロのデビュー作。とは言えパニック映画ではなく、生命を持続させる装置に囚われた人間の哀愁を描いたファンタジーホラーである。クロノスは内部に昆虫が潜んでおり、刺された者は体内へ分泌液を注入される。その作用によって若々しい肉体を得ることができるのだが、これを維持するためには人間の血を吸わなければならない。この設定だけだと単なる吸血鬼モノのように感じられるが、本作では知らずにクロノスを使ってしまったグリスの戸惑い悩む姿が情感たっぷりに綴られており、観ていて切なさが込み上げてくる。特にグリスが愛する孫・アウロラの血を吸おうとする辺りの一連の下りはこの映画の真骨頂といっても過言でなく、製作者の確かな演出力を感じ取ることができた。「ミミック」とは全く違った味わいのする小品だ。

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