キング・ボクサー大逆転 「評価 B」
若き拳法家チーハオは、もっと強くなってもらいたいという師匠ソンの願いにより、尚武国術館のスン館長の下に弟子入りすることとなった。道中、華北五省の拳法界を征服しようとしている百勝武館の連中と戦いながら、尚武国術館に辿り着くチーハオ。一年の下働きを経て入門を許され、めきめきと実力をつけていった。やがて彼の成長を見込んだスン館長は、チーハオに秘術「鉄掌」を教える。ところが、それを面白くないと思ったのは兄弟子のハン。彼は百勝武館と共謀し、チーハオの両手を叩き潰してしまった。絶望のあまり一時は途方に暮れるチーハオだったが、懸命なリハビリによってそれまで以上の腕を身につけ、国術大会に出場。必殺の鉄掌で百勝武館に勝利を収めた。しかし試合の直後、スンが百勝武館館長のモンによって殺害される。更にソン師匠までモンが呼び寄せた日本人武術家・岡田に殺されたことを知り、チーハオの怒りの炎が燃え上がった…。
全米公開された初の香港映画。目まぐるしいまでにスピーディーな展開が印象的である。例えば厨房の手伝いをしながら修行に励む場面。「水汲み中に転ばされる→道場の掃除をする→木の幹を手刀で折る→道場で勉学に励む→水汲み中の妨害をかわせるようになり、入門を許される」という一連の流れが僅か二分にも満たない時間のうちに行われ、しかも盛り上がるような音楽がかかるわけもなく淡々と進行するので、恰もすぐに下積みが終わったかのように見える。ところが後の会話で、このほんのちょっとの間に一年も経っていたことが判明するのだ。とてもそうは見えない展開の速さに、びっくりすること請け合いだ。
他には、映画の後半から頻発する残虐シーンの数々も心に残る。目玉をえぐられるシーンが二回も出てくる他、鉄掌を受けて大量の血を霧吹きのように噴出するカットまである。ただ、これらの描写はそこそこのインパクトを持ってはいるものの、あくまで嫌悪感を覚えない程の残虐さで抑えられている。「直撃地獄拳 大逆転」なんかに見慣れていると少し物足りなく感じられるだろう。
しかしこれらは裏を返せば、観ていて飽きさせない、万人向けの内容ということだ。そういう意味ではカンフー映画入門として最適と言え、初めて全米に紹介されたのも頷ける作品だった。
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