SFX リタリエーター                「評価 B」
普段は映画撮影における特殊効果担当。だが一度牙を剥いたら、自前の火薬と機材でどんな超兵器をも作ってしまう危険な男。それがこの映画の主人公、SFXマン・スティーブだ!
大都市では、二大麻薬シンジケート「マシーニ派」と「モーガン派」による抗争が繰り広げられていた。ある時マシーニは一計を案じ、高級娼婦ドリスにモーガンのアジトから札束を盗んでくるよう依頼した。言い付け通りに金庫から100万ドルを奪い、アジトを脱出するドリス。すぐに追っ手がやってくるが、たまたま通りかかったSFXマンのスティーブに助けられて一命を取り留めた。ドリスが麻薬組織の一員なんて露とも知らないスティーブは、彼女を安全な場所まで送り届けると「ああ、今日もいい事したなあ」といった顔で仕事場へと向かった。だが彼が一仕事終えて家に帰ると、そこには愛するワイフの姿がなかった。部屋には荒らされた形跡があり、「嗚呼、何処へいったというんだワイフ! まさか僕が仕事に忙しかったから、怒って実家に帰ったのでは!」などと焦りまくるスティーブだったが、すぐにモーガンのアジトから連絡がきた。「妻は預かった。返して欲しくばマシーニのアジトから100万ドルを持ってこい」と。そこでSFXマンのスティーブは、火薬と発炎筒を駆使してマシーニのアジトに潜入。見事100万ドルを取ってきたつもりだったが、これらは全て偽札だった。怒り狂ったモーガンはスティーブの妻を殺害。彼女の死を目の当たりにしたスティーブは復讐の炎に燃え、完全武装してモーガンのアジトへと単身殴り込みをかけた…。
この映画の面白いところは、何と言っても映像の魔術師・SFXマンによる仕掛けを駆使した戦い方だ。スティーブは何故か催涙ガスや偽の爆弾なんかを常時持ち歩いており、ピンチになるとそれらを投げて華麗に脱出する。また彼の乗る車もバリバリに改造が施されており、自動操縦機能や小型ミサイルといったものが備え付けられている。彼の住む家も同様で、侵入者を感知するレーダーは勿論のこと、壁が回転して骸骨が現れたり、通るものをバーナーで焼き殺す廊下があったりと、まるで忍者屋敷のような超絶設計が施されているのだ。そして極めつけはクライマックスで、スティーブは木材と鉄パイプから戦車を自作する! 戦車は装甲こそ脆いが小型ミサイルと機関銃が搭載された本格的なもので、モーガンの手下達は全く手を出すことができずに尽くやられていった。
ああ、ここまでやってのけるSFXマンって何て格好いい職業なんだろう。映画製作者を主人公にした作品は数あれど、これほどSFXマンを格好よく描いている映画はそうそう無いぞ。特殊技術を専門的に教えている学校は、プロモーションとしてこの映画を使ってはどうだろうか(←間違いなくJAROに訴えられます)。
こんなSFXマンの描かれ方と同様に本作、ストーリーもぶっ飛んでいるから大したものである。例えば犯罪シンジケートの連中が揃いも揃ってお間抜けで、冒頭のドリスは金庫の扉を開けっ放しにして逃げたものだから即座に金が盗まれたことが発覚し、ろくに逃げらもしないうちに組織の者に追い詰められる。スティーブ宅に侵入したマシーニ派の刺客は、回転壁から現れた骸骨を見て「ヒャー、がいこつ怖い!」と逃げ出す。モーガンに買収された悪徳警官らは、折角スティーブを捕まえたのに彼が出した偽爆弾に気をとられている間にまんまと逃げられてしまう……といった風に、マトモな悪役が一人としていないのだ。そんな彼らが打倒スティーブに燃える姿はコメディさながらであるが、本作は決してギャグのつもりで作られたわけではないから頭が痛くなってくる。更にスティーブとワイフのベッドシーンでは、燃える二人の様子を表しているのか爆破される建物の様子が何度もフラッシュバックされるという爆笑必至の特殊効果が加わっていたりと、演出までもが常人の発想を遥かに超えている作品だ。

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