吸血蛾クレア 「評価 D」
19世紀のロンドンで発生した連続殺人事件。被害者はいずれも刃物のようなもので体を裂かれ、大量の血を抜き取られていた。事件を捜査していたクレネル警部は被害者と面識のあるメリンジャー教授に協力を仰ぐが、何故か教授は嘘の証言をしたりと非協力的な態度をとっていた。それもそのはず、教授は密かに蛾人間の開発に勤しんでおり、今回の殺人事件は彼が産んだ蛾人間第一号・クレアの仕業だったのだ。蛾に人間の血を吸わせることで誕生する蛾人間は、生まれた後も人間の生き血を求める習性があった。教授は警察の目を逃れるために南仏のアッパーハイムへと逃亡するが、そこでもクレアは血を吸うために人を襲い続ける。やがて自分の研究が恐ろしくなった教授は開発中だった第二号を焼却処分し、クレアの始末も行おうとした。ところがクレアの成長は教授の予想を遥かに上回っており、教授は返り討ちにあって命を落とした。一方その頃、教授を追ってアッパーハイムに来ていたクレネル警部は、思わぬところから事件の核心を掴む…。
全編ミステリー調で進行する、68年製作のマッドサイエンティスト映画。登場人物の衣装や街の風景などは全て19世紀の雰囲気で統一されており、殺人事件を追う警部の活躍と相俟って、さながら推理小説のような世界が作中には展開されている。ところが肝心の蛾人間の造形があまりにもお粗末で、そのギャップには失笑を禁じえなかった。何せ着ぐるみが古くなった布を縫い合わせて再利用したような、質感0の頼りない代物なのである。布製の羽が風を受けてゆらゆら揺れているところなんかを見ていると、実にやりきれない気持ちがこみ上げてくる。作品の目玉なんだから、せめてもう少しちゃんとした着ぐるみは作れなかったんだろうか。そもそも蛾人間の攻撃を受けた昆虫研究家が「クロメンガタスズメに襲われた」と証言する場面があるが、この映画の蛾人間は全身真っ黒で模様なんかなく、どう見てもクロメンガタスズメには見えないぞ。蛾人間がウリのはずなのに、蛾人間が出てくると途端に画面が安っぽくなるという本末転倒な作品だった。
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