悪魔の毒々ゾンビーズ 蘇る死霊伝説 「評価 D」
湖畔のキャンプ場は美しい自然に恵まれていた。草木を撫でる穏やかな風。無邪気に戯れる動物たち。そして野原に咲き乱れる絢爛たる花々──って、これマリファナじゃねえか! というわけで不正に麻薬栽培をしている組織の存在に気づいた政府は、組織のアジトに二人の捜査官を派遣した。ところが捜査官たちは盛りの過ぎた中年男なのに対し、組織の連中は精力ビンビンのヒッピー野郎ばかり。戦ったところで到底勝負にならず、捜査官たちはナウなヤングのギラギラパワーに押されてポックリ逝ってしまった。かくして組織が想定の範囲外に手強いことを知った政府は、考えに考えに考えた末、新たな作戦に出た。上空からマリファナ畑めがけて除草剤を散布し、彼らの収入源をおじゃんにしよういう算段だ。作戦のための除草剤として政府は新薬ドロマックスの使用を許可するが、嗚呼、これが悲劇の幕開けになると誰が予想できたであろうか。ドロマックスは開発されたばかりでろくにテストもされていない、毒々しさ抜群のべらぼうにデンジャラスな代物だったのである。そんな薬を豪快に撒いちゃったものだから、マリファナ畑にいた組織のヒッピーたちは薬の作用でどんどん体が腐っていき、終いには全身イエローカラーで統一された世にも恐ろしい毒々ゾンビへと姿を変えてしまったではないか。しかしそんなことは露知らず、政府の森林局で働いているトムは、愛妻ポリーと一緒に休暇を利用して例のキャンプ場へとやってきた。辺りでは毒々ゾンビ軍団に襲われた人々が「うわあぁぁぁぁ!」だの「ぎょえぇぇぇぇ!」だのと悲鳴を上げている中、テントに籠もってホットでスイートな言葉を交し合う二人。この空間を支配しているのは二人だけ。二人の世界は誰にも邪魔できない──かに思えたが、そんな彼らにも毒々ゾンビの魔の手は迫ってきた…。
トロマ社が製作にも配給にも関わっていないのに、何故か「毒々シリーズ」であるかのような邦題を付けられている作品。町の住民全体がゾンビに変わった「悪魔のゾンビ天国」と違い、この映画で毒々ゾンビになったのは組織の連中とドロマックスを撒いた飲んだくれオヤジのみ。この数の差が原因なのか、本作では顔にペイントを施しただけのお手軽ゾンビ軍団が見当たらず、おかげで画面から明らかな安っぽさが滲み出てくることは滅多に無い(あくまで「悪魔のゾンビ天国」と比較してのことだが)。ぱっと見ただけでは本作、ごく普通のゾンビ映画なのである。
一方で脚本はいい加減そのもので、毒々ゾンビたちは初めは水ばかり飲みたがっていたのに、何時からか急に人肉を喰らうようになる。そうかと思えば今度は人家に火を放ってみたりと、行動パターンがコロコロ変わるのが摩訶不思議。また前半部分は主人公が誰なのかがなかなか判別せず、随分と散漫な印象を受ける。日本の配給会社は、この辺りのテキトーなテイストにトロマらしさを見出したのだろうか。
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