REX 「評価 B」
チャイナタウンで探偵業を営んでいる男、ヴァンス。彼は一見すると普通の人間だが、実はホログラム装置を使って人間そっくりに扮している肉食恐竜だった。恐竜は6000万年前に絶滅したと世間では言われている。しかし本当は、姿を変えることで陰ながら生き続けていたのである。ヴァンスは若者の自殺事件を調査しているうちに、恐竜たちによる宗教団体「進化の声」の不穏な動きを察知した。社会から隠れる日々に耐えられなくなった恐竜たちが、野生化させた恐竜を解き放ち人類に宣戦布告しようとしていたのだ…。
恐竜が人間社会に紛れて生活しているという、「MIB」チックな世界観がユニークな作品。しかし奇抜な設定にもかかわらず、この映画の主題は社会に隠れて暮らす者の葛藤という決して軽くないものだった。たとえ人間そっくりに扮して社会に溶け込んでいるとしても、恐竜は所詮恐竜。人間と愛し合うなど到底無理な話だ。恐竜たちは、求愛してくる人間を不本意であっても撥ね退けねばならないのである。これは彼らにとって大変に辛いことだが、人間の姿を借りて生き続ける限り、何度でもこの悲しみは襲ってくるのだ。逃れる術はただ一つ、迫害される覚悟で正体を明かし、自分たちの存在を否が応にも世間に認めさせるしかない。「進化の声」が人類と戦争を起こそうとする目的は、まさしくここにあった。それを知ったヴァンスは、付き合っていた人間の女性と涙ながらに別れた過去を思い出して苦悩する。彼らの凶行を止めるべきか、否かと。ヴァンスの出した結論には些か不十分に感じられるところもあるが、テーマに対する取り組み方は評価に値する作品だった。
因みにこの映画、劇中のテレビで恐竜映画好きならば誰もが一度は見ている「トカゲとワニの決闘シーン」が流れていたりと、細かいネタが散りばめられているのも見所だ。
TOP PAGEへ