ザ・ギニーピッグ マンホールの中の人魚 「評価 A」
絵に打ち込むあまり、女房に逃げられた男がいた。彼は喪失感を満たすために、毎日のようにスケッチブック片手にかつて遊んでいた地下水道へと足を運んでいた。そんなある日のこと、男はゴミだらけの水道で昔出会った人魚と再会を果たす。しかし人魚は病に冒され、腹部に醜い吹き出物ができていた。慌てた男は人魚を家に連れて帰り、懸命に介抱を行う。だがその甲斐なく、時の経過と共に吹き出物は範囲を広げ、人魚の身体を蝕んでいった。困り果てる男に対し、人魚は告げる。朽ちていく自分のことを絵にして欲しいと…。
「ギニーピッグ」シリーズの中でも、これだけ日野日出志の作家性が発揮された作品はないだろう。拠り所を失いたくない一心で男は介抱を続ける一方で、そんな彼を嘲笑うかのように人魚の病は悪化していく。あまりもの遣る瀬無さに歪んでいく男の心を本作は生々しく描いており、観終わった後に物寂しい余韻を残してくれるのだ。
またシリーズの特色ともいえる、リアルかつグロテスクなメイクも見逃せない。難病に冒された人魚の様子はこれ以上ないくらいに痛々しく、吹き出物からは七色の膿が流れ、やがて寄生していたゴカイが這い出し、体内からは内臓が排出される。この過程が思わず目を背けたくなるような見事なメイクで表現されているのだが、特に本作においてはこれが単なる物見趣味に終わらず、ストーリーの深刻さを盛り上げる重要な要素となっていた。シリーズ初期のような実験的な内容ではないが、一本の映画として純粋に評価できる作品だった。
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