ジャングル・チェイス            「評価 B」
アフリカのホテルへ仕事に来ていた、トップモデルのビッキー。ある日彼女はマネージャー・ジョシュの口煩さに我慢できず、彼の束縛から逃れるために四日間の一人旅へと出かけた。しかし一本道でジープを走らせていたら対向車線から来たトラックと接触。ジープは何度も横転しながら道路を外れ、ビッキーを投げ出して爆発炎上してしまった。思わぬ事故に茫然となったビッキーは、しばらくの間わけもわからず辺りを歩き回っていた。そして正気を取り戻した時、彼女は道路から遠く離れたサバンナのド真ん中に佇んでいたのである…。
絶望的状況に立たされたヒロインが自力で這い上がっていく様を描いた、直球勝負のサバイバル映画。この作品のポイントは、物語が始まった時点で既にビッキーがどん底の生活を送っている点にある。ドラッグを常用し、つまらない男に騙され、自分を心配する者を拒絶する。そんな我侭放題を尽くしていた彼女が弱肉強食の非情な社会に投げ出され、どん底の更にどん底へと叩き落されるのだ。ハイエナやライオンと遭遇し、茨に足を傷つけられ、渇きや飢えに苛まれ──と、文明社会の自覚しづらい底辺とは違う、リアルで身に迫る底辺が彼女の目の前に突きつけられる。それによってビッキーは漸く這い上がる決心を固め、虫を食らい、泥水を啜りながら、かつての堕落した日々を悔い改めていくのだ。
本作ではこの改心の過程が、ビッキーの夢や回想を通して綴られている。初めはみじめな格好の自分を周囲が卑しむことに恐れを抱いていたビッキーが、逞しくなるに連れて次第に純粋だった昔に思いを馳せるようになるのだ。心情の変化を台詞で語らせず、観る者にダイレクトに見せつけるこの手法には舌を巻かされた。
普通の女の子のはずのビッキーが水筒やカバンを自作するなど、些かリアリティに欠けた描写が散見されたことは気になったが、登場人物の心情描写が圧巻な作品である。
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